【あんスタ】おおうそつき【深海奏汰】 (ページ16)

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曇り空/2 ページ16

『あぁ、忌み子じゃ、忌み子じゃ、忌まわしい』

　ふと、老婆の声が聞こえた気がした。思わず塵取りを落としてしまい、ガタンと音がなる。

『〝これ〟は祭事で使います』

『何を言う、ここに悪いものを運び込んだ忌み子じゃぞ』

　ドクン、と心臓が跳ね上がった。昔、私がまだ実家にいたときの記憶。

「……あの、大丈夫ですか？」

　ふと聞こえた綺麗な声。周りを見ると、３人の子が心配そうに覗き込んでいた。

「あぁ、うん、大丈夫。」

「……ていうか、A先輩ですよね。俺、覚えてます？演劇部の……」

「真白くん、でしょ。覚えてるよ。」

　取り繕うように言葉を探すけれども、思うように出てこない。結局、出てきた言葉はそれだけだった。

　改めてみると、１年生３人組だった。薄茶色の子は以前ちょっとした事件の聞き込みをしていた際、お世話になった真白くん。

　それから、よくグラウンドで見かける天真爛漫そうな子。

　もう1人は水色髪の、いつも屋上で洗濯をしている子……確か、紫之くんだったか。

「何かありました？」

「大丈夫だって、言ったでしょう？ほら、もう遅いから帰りなさい。それとも、送っていこうか？」

「あはは、いえ、お構いなく。俺ら、今日は泊まりなので」

　そう言う真白くんはよく見るあんず作の練習用ジャージ。

　そこでようやく何をしていたか思い出して、慌てて塵取りを拾った。

「って、こうしちゃいられない。ごめんね、またね！」

＊

「『おそい』です」

「すみません」

　言いながら、手元は片付けに集中することにした。

　空は段々曇ってきていて、もう星は見えない。

　さらさらと、冷たい空気だけが吹く。

「『なつ』なのに、『つめたい』ですね」

「そろそろ降り始めそうですね。今日は逆先くんの所に転がり込もう……」

　独り言でそう呟くと、彼はなにかを言いたそうな顔をして、諦めたような顔になった。

「てつだいます」

「ありがとうございます」

　ホウキを手に取った瞬間、奏汰先輩は目を見開いた。

　そのまま硬直してしまって、焦って強めにバシバシと背を叩く。

「『ち』です」

「は？」

　彼が指差したその先、そこには私のものではない、黒ずんだ斑点の血痕が残っていた。

　そこから頭を回すのは容易だった。ある人が思い当たり、私は立ち上がる。

「次の日、話を聞きに行きましょう。出来れば、仁兎先輩も連れてきてください」

　その言葉に、先輩は頷いた。