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orange/3 ページ8

人の少ない小さな建物。




 演劇部の方でよく貸し切りをお願いしているので、最早店長とは顔見知りだ。





 いつしか唐突に、零が「雑談したい」とかほざいているので五奇人で集まった。








「ご注文を伺ってもよろしいでしょうか?」







 友也くんのような、普通の子。






 さっき横目に見た窓際の席にいた子。







 先ほど聞こえてきた会話から、店長の身内だと聞いている。まぁ、バイトの子も二人三人くらいらしいし、人手が足りないのは当たり前だろう。







 注文を聞き終わって、きごちなく裏へ戻って行く彼女を見守りながら、ふと足元を見た。








 見つけたものを拾い上げる。







「おや?日々樹くん、それは?」





「落ちていました。おそらく、あのウェイトレス代わりの子のものだと思いますが……」





「へェ。随分可愛らしいネ?」






 隣の魔法使いが言った通り、これぞ女の子といったパステルカラーの小さな袋。







「とりあえず、届けてきます」






「『行ってらっしゃい♪』」






 マドモアゼルにも見送られ、カウンターで棚を物色していた店長に声を掛ける。







「あのすみません。さっきの子、これを落としていったみたいなんですが……」






「えっ、あぁ、Aのか……すみません、ありがとうございます。」






「えっと、彼女は?」





「すみません、ついさっき帰路についちゃいまして。」





「そうですか。……あぁ、まだそんなに経っていないですし、私が追いかけますよ」






「えっ、いやいや。お客様にそんなことをさせるわけには」






「いえ、大丈夫ですので。ということで零!ちょっと待っていてください☆」







 外から裏口に回ると、丁度彼女が出てきたところだった。







「すみません、これ、貴女のですよね?」






「えっ、あ、本当だ。すみません、ありがとうございます。」






「いえいえ」






 その時、私はあることに気づいた。





 ──この子は、私と目を合わせない。






「あ、よかったらこれ、差し上げます」






「ほぉ?」






「お礼というかなんと言うか……別に、大層なものじゃありませんし」








「そうですか。では、ありがたく。」







 そう言うと、彼女はそれを私の手のひらに初々しく乗せ、走り去っていった。





 ……行動は友也くんと似ている。

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作者名:竜花 | 作成日時:2019年3月8日 20時

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