推しと運命だなんて聞いてない【太宰治】

7話 ページ8

「なぜ私たちは運命の番なのに付き合ってくれないのかい？理由を教えてくれたまえ」

「り、理由…」


私がまるで捨てられた子犬のような視線を浴びせられている理由。胸がただひたすらに痛い。やめて待って無理そんなかわいい顔でこっち見ないで。現場からは以上です。









遡ること十分。私は休日を利用して近くのショッピングモールに来ていた。ただでさえ文ストの世界っていう意味わからんワールドに転生したあげくオメガバース設定つきという事態の深刻さを理解した私。




ちょっと運営さん私そういう特典を希望した覚えないんですけどー？？？？助けてへるぷみー。



前世、ツイッターで「ヤンデレ太宰さんに監 禁されて罵られたい」とかいうみんなドン引き☆ドマゾ発言をしていたのだが、自ら襲われるような変態的嗜好は持っていない。




だから通学に使う道を変えたり、変装で眼鏡をかけたりいろんな対太宰案を決行した。が、みなさんお察しだと思う。



「この道はAちゃんが一人で歩くには少々危険だよ」

「イメチェンかい？どんな君も美しいね愛してるよ」





な ん だ こ の 人。


あたかも偶然を装って毎日一度必ずどこかで会うのだ。いやたしかにスーパーハイスペックな男だし私に個人情報だとかプライバシーなんて無いなんだろーなーとか思ってたけどさすがに。おかけで姿を見つけてから逃げる瞬発力が養われました。コーナーで差をつけろってか。









「なんで太宰さんがここに…」

「やあ！偶然だね、どうせなら一緒にランチでもどうだい？」



本当にたまたま見つけたカフェにいるなんて。全米が泣いた、いや全私が泣いた。えなにストーカー？通報案件でしょ。


ニコニコと笑う様子はとても絵になる。だけど瞳の奥に「逃げるなんて許さない」というメッセージとセットで肉食動物に狙われている気分つき。ハッピーセットがよかったです！！




「あはは…偶、然。じゃあご一緒しても？」

「もちろん。さあおいで」



ぱあっと子供がプレゼントをもらったかのような顔をして喜ぶ太宰さん。我が推しは本日も絶好調なり。









そして冒頭にいたる。





「そう、理由だよ。私たちは運命で、こんなにあからさまに好意を寄せているのになぜ受け入れようとしない？なにか深刻な理由でもあるのかい？もしかして脅されているとか？」

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