【文スト×名探偵コナン】猟犬と迷いこみました

第拾参幕 ページ15

【電網に囚われた囚人は】


芥川がAに敬語を使わないのは、彼女の希望である。曰く。芥川の部下への厳しい言葉使いを聞いてから、敬語に違和感を感じた。

だから、上司である自分にも普通に接してくれて構わない。それが命令。芥川も勿論、背く意志もないわけであり。従っているのだ。

「ぐえ……」



あの芥川龍之介とは思えぬ、潰れた蛙のような声を出して机に突っ伏した。元々、機械は苦手分野であり、ハッキングなど容量限界。

否、容量破壊に等しい。それに加えて、同じく機械に触ったのは探偵社に入ってからの敦。互いに互いを嫌う犬猿の仲でもある。

だからこそ最悪だ。だが、相手はポートマフィア参謀でほぼ最強の異能力者。自分達は殆ど死にかけたあの状態の、憤怒の命令。

「あ、また失敗……」



「人虎、いい加減にしろ」



「とか云う芥川も失敗しかしてないだろ」



「……」



「まあ、僕も云い返せないけど」



敦も参ったように項垂れて、テレビをつける。相変わらず事件の報道ばかりで、最近の楽しそうな話題はない。溜め息がちらほら。

芥川も疲れが体を侵したのか、隣で攻撃も悪態も出来ずに座り込む。電子機械は放り投げられ、がしゃんと不吉な音を立てた。

「刺殺か」



「焼け死んだみたいだな」



「……こっちは射殺か」



「これは鈍器で殴られてるし……」



「おや、これは絞殺ですね」



条野が音もなく帰ってきたらしい。敦は肩を揺らした後、おかえりなさいと呟いた。買ってきた食器を棚に入れて、機械を拾う条野。

「機械を無下に扱わないで下さいよ」



「ふん」



「全く、これだからポートマフィアは……」



「貴様等のような愚泥に云われたくはない」



「あー!!ほら、やめましょう!?」



敦が慌てて止めに入るが、不穏な空気は消えない。勿論、芥川も条野を威嚇する行為自体辞めるつもりなど毛等もないのだから。

芥川は仕方無しに機械をいじる。羅生門が時折、苛ついたようにビクリと動くがどうでも良かった。早くこの命令を終わらせたい。

暑さが茹だる中。ひんやりとした心地良い部屋は異様なほどの熱気がある。温度などではなく、雰囲気というか。意気込み具合が。

「あ、芥川!!」



敦の声が高らかに響いた。遂に、この米花町全体の監視カメラの映像を奪うことが出来たのだ。しかも、異能のお陰でバレることは無。



＿＿＿＿＿Aの異能力で、だが。

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