【アイナナ】和泉一織の双子の兄

１８-オーディション- ページ19

オーディションをするにあたって、そのメンバーは審査員の紡と一対一になるよう、別室へと移動する。そこでオーディションを受けるのだ。
　陸が部屋を出た後、丁寧なノックをして入ってきたのは億斗だ。

　「８番、和泉億斗。よろしくお願いします」

　透き通ったような声でそれだけ告げると、さっさとポジショニングに入る。
　しなやかな手足から生み出されるのは、華麗なステップ。美しいダンス。バレエさながらにしなやかで華やかな体の動き。

　「(華麗で、可憐で)」

　歌声は強く弱く、激しく優しい。立っているのは１人だけなのに、壮大な世界観に魅せられた気がした。不思議な感覚だった。
　集中の中にもファンを意識して浮かべる柔和な表情。まるで″アイドルとしてどうあるべきか″を知っているかのようで。
　紡はいつの間にか、億斗のパフォーマンスに夢中になっていた。

　「(圧倒的……)」

　しずしずと曲が遠くなる。億斗の動きも小さく静かになり、それでいて指の先まで熱がこもっている。とても美しい″ショー″だった。
　紡は称賛の拍手を送りたい衝動に駆られたが、高揚感をぐっと押し留める。

　「ありがとうございました。これでオーディションは終了です」
　「……、ありがとうございました」

　深々と頭を下げて部屋を出ていく億斗。その背を見送って扉が閉まるのを確認すると、紡は大きなため息をついた。

　歌もダンスも巧く、まだ若さの可能性がある一織。
　表現力に長け、曲の表情をぐっと深く見せてくれる大和。
　エネルギッシュさに光るものがある三月。
　天才肌で、中でもダンスが格段に巧い環。
　その時その状況に応じてそつなく動ける壮五。
　ビジュアルが特に美しく、まるで王子様のようなナギ。
　圧倒的な歌唱力で、つい応援したいと思う陸。
　繊細な歌声とパフォーマンスで見る者を魅了する億斗。

　この中から、たった３人。

　……あぁ、難しい。

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