17-志望動機- ページ18
「みんなが……オーディションに受かりたがるのに、どんな理由があるかはわからないけど」
先程まで黙っていた億斗が呟いた。
「自分も周りも騙し騙しでやっていく気なら、例えオーディションに受かっても……絶対に後から辛くなるよ」
「……」
「……億斗……」
バスケをしていた時の快活そうで親しみやすい雰囲気とは打って変わって、独特の色気を醸す陰鬱な表情。
一織がぴくりと肩を震わし、三月が影を含んだ声音で彼の名を呼んだ。
「りょーかーい。俺は抜ける」
「え……」
ひらりと手を挙げて扉に向かっていくのは、最年長の大和だった。飄々とした背中で扉の前に立ち、ドアノブに手を掛ける。
「ここにいる誰かを押し退けてまでやるつもりはない。俺の志望動機なんて復讐みたいなもんだ、マトモな夢持ってる奴に譲るよ」
「復讐って……」
「んじゃ、お疲れ──」
「ま、待ってください……!」
ガチャリとドアノブが回されたところで、紡の声が扉を引くのを止めた。
「オーディションだけでもどうか受けていってください! こんなこと、私のワガママかもしれませんけど……もっと、見てみたいんです」
「歌って踊る、皆さんが見たいです。お願いします……! お願いします!」
紡が頭を下げた。
「レディーだけに頭を下げさせるわけにはいきません。ワタシからも、お願いします」
「お、お願いします!」
「僕からも!」
後ろで、紡以外にも頭を下げる音がする。ナギ、陸、壮五の声。
暫しの沈黙の後、大和が静かに訊ねる。
「バカだなお前ら……ライバルが1人減るんだぞ」
「そりゃそうだけど……こんな風に減ったって嬉しくねえし!」
三月が仁王立ちで胸を張る。このポーズは小柄な彼が決断をするときの癖だ。
重い空気に、再度大和の声が挿す。
「……って、みんな言ってるけど……あんなこと言ってたヤスはどう思う?」
「……別に……抜けろも残れも言ってないけど。そのくらい自分で考えなよ」
億斗はふわりと笑って、髪を耳に掛けた。大和は音もなく肩越しに振り返る。億斗の笑みは優しくも見えるし、突き放すような冷笑にも見える。どちらなのかわからなくて、大和は苦笑した。
「……そっか。……はぁ……。わかったわかった」
億斗の言動が大和にとって苦手な人物と重なって、そう返すしかなくなった。
「やるよ、オーディション」
379人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
久薙聖楠(プロフ) - 真紅さん» きゃー!!!そっちです!!!!ずっと直そう直そうと思って忘れてましたありがとうございますすみません〜〜〜〜!!!!!恥ずかしいし申し訳ない(´;-;`) (2018年4月16日 17時) (レス) id: ae62bd0b5f (このIDを非表示/違反報告)
真紅(プロフ) - すいません!スペックのfpはピアノフォルテではなく、フォルテピアノと読むのではないですか?(あえてピアノフォルテと表記してるならすいません!) (2018年4月16日 14時) (レス) id: bfa0214c95 (このIDを非表示/違反報告)
久薙聖楠(プロフ) - アユラさん» ありがとうございます!!!頑張って書き続けていきます!!!(・д・ = ・д・) (2018年4月15日 15時) (レス) id: ae62bd0b5f (このIDを非表示/違反報告)
アユラ - メチャ面白くないすかこの小説...(°_°)ハマりましたよwこれからも更新頑張ってくだせぇなd( ̄  ̄)応援してますよ( *`ω´)ファイトだぜぇ!!w (2018年4月14日 23時) (レス) id: 22855408aa (このIDを非表示/違反報告)
久薙聖楠(プロフ) - 夢巫女さん» ありがとうございます!!!伏線張っていきたいと思いますが、張りすぎて先が読めたり「思ったより内容ショボいじゃねーか」とはならないように気をつけたいと思います(笑)今絶賛執筆途中ですのでもう少しだけお時間ください!!_( _´ω`)_ (2018年4月13日 22時) (レス) id: ae62bd0b5f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ