蝶の羽とて骸と化す【ドラコ・マルフォイ】【ハリー・ポッター】 (ページ5)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:687 hit

・ページ5

意識が落ちるかと思った。

ローブの首がぐいっと引っ張られ、余りの圧に息ができなかったのだ。

「すぐに医務室へ連れて行きなさいMs.カミラ」

そうだ、このシャンプーの匂いは。
今僕に巻き付いているこの腕は。

「はい先生」

Aだ。

貴女、危なかったのよ！

そうグレンジャーにすれ違い際言われたAは悲しそうに眉根をあげ、すこし強めに僕のローブの袖を握った。

何が危なかったのか、足元を見れば未だにぐつぐつと煮だっている魔法薬の成りそこないがあるじゃないか。

反射で脚を退ければ、元々足があった場所に大きな泡が弾けて床が少し溶けた。

後ろからの視線は痛いが、Aの背筋は伸びきっている。
それが嬉しくて、羨ましかった。

教室を出てもAは黙っている。
だが不思議な事に、何も言わず、言われず、ただ僕を医務室へ引っ張っていくだけのAに酷く安心している自分がいた。

何より、今は趣味がいい返事を返せそうにないし、これからきっと、ちくちく嫌味を言われるのだとAの事をぼんやり考えていた。

医務室までじゃなくて、この時間がずっと続けばいいのに。

はた、と、そんな事を思った。

こんなにもAの事を僕の中で悪者にしておきながら、まだ彼女の事を思うというのか。

二歩先を行くAの後ろ姿は、下ろしている髪のせいで赤いフードの裏地が見えない。
風に煽られてその髪が持ち上げられた時、裏地の色が緑だったらな、とこれまた都合のいいことがこんこんと溢れた。

.