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シリウスは己の瞳が嫌いだった。
鏡を覗けば両親にそっくりの顔が写り、嫌気がさす頃に弟の顔が浮かんだ。
そんな自分の名が、よりにもよってシリウスなんて、馬鹿らしくて仕方がない。
あと少しブラック家の誰にも似ていない顔なら。
そう何度も思った。
一方、シリウスは己の瞳に感謝していた。
木陰で涼み横になって休憩しているところにテディが腹に乗ってきて、それを追いかけてAがやってきて、そうやって、何度も三人で不確かな木葉の影を愛した。
どれだけ己の瞳が嫌いでも、とれだけ己の名が嫌いでも、どれだけ己の血が嫌いでも、少しは感謝できた。
テディがニフラーなのには同じくらい感謝していた。
彼がニフラーでなければ、この瞳を求めて脱走してくることも、それを追いかけてAが会いにきてくれるのも、きっと有り得なかった。
七年間一度も出会う筈のなかった人に出会えた。
「この前ね、どうしてシリウスのところに行くか考えたんだよ」
「ふーん、何か面白いことでも分かったのか？」
「ああ！シリウスがいつも元気だからさ！」
シリウスは驚いて、テディを見た。
テディはいつもより大きく開かれたまぶたから覗くその瞳を、うっとり見つめては手をのばした。
ああ、近くで見たいだけなんだな。
シリウスはその時はじめてきちんとテディのことを見た。
分かった気になっていた。
所詮ニフラーなのだと、所詮輝くものに興味があるのだと。
でも違った。
「テディはきっと、シリウスが楽しそうにしてるのが好きなんだよ。ほら、動物は人の気持ちがわかるって言うでしょ？」
こいつはもっと違う。
それに、シリウスがいつも元気なのではない。
Aと、その足元にいるテディを見つけると、本人も気がつかない内に自然と笑顔に、元気になっている。
テディがいないと、シリウスがその事に気がつくことは一生なかっただろう。
シリウスはそっと、Aと結ばれた時にはお礼をしなければな、と思った。
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作者名：おーすし | 作成日時：2023年2月11日 19時
