カラトリー/トム・マールヴォロ・リドル ページ14
A・テイラーはいつも周りに人がいた。
彼は可愛らしい顔つきをしていて、声こそ大きくなかったものの、よく笑い、よく話し、よく隣にいた。
愛想といえば簡単かもしれないが、彼の纏う柔らかさというのは何にも勝って、皆いつしか彼の虜になった。
トムはそれが不思議で仕方なかった。
その所為でAのことがひどく憎々しくもあったし、彼を知りたくて堪らなくもあった。
一先ず彼がグリフィンドール生だからということにして早急に目をそらした。そうすることが一番の得策だと本能で理解していた気がする。
「やぁリドル、レポートをやっているの？」
人が集中していても構わず話かけてくるのは、いつ彼が話かけても誰一人として嫌な顔をしないからだろう。
そう思うと、可愛らしい声も、笑顔も、存在も、全て恨めしくなって仕方がない。まるで自らが話しかけて不愉快な顔をされなかったことは数える程度しかなかったような気がしてくる。
「あぁそうだよ。魔法史の、ゲラート・グリンデルバルトについてまとめる課題なんだ」
彼はそれからそうなんだ、と返事をして黙り込んだ。
それに何か大変な用事があると思っていたトムは拍子抜けな気分になって、それから少々Aに対して腹を立てた。
グリフィンドールである君が、スリザリンである僕に話しかけるなんて、何か用事があると思うものだろう。
そう心の中で正当化してから、どう毒付いてやろうかと考えた。
「そういえば、探知不可空間拡張魔法の練習をしてて、その時使っていた飴が残っているんだけど、君も一つどう？」
吐こうと溜めた毒も抜かれてしまった。
一体その小さな飴を、どれ程拡張した空間にいれようというのかまた不思議で仕方なかったが、貰えるものは貰っておいた方がいいだろうと、気が付けば飴を一粒貰っていた。
それから彼は満足したのか帰るよと図書室を去っていった。
手元に置いて溶かしてもしょうがないので、包みを剥がして口に放り込んだ。
彼の体温で少し溶けた飴は随分優しい味がしたのを覚えている。
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作者名：おーすし | 作成日時：2023年2月11日 19時
