【QK】硝子の靴【izw】

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変わらぬ日常。変わらぬ風景。変わらぬメンツ…に混ざる違和感に、一抹の不安を抱いた。


｢ねえ、渡辺くん。あの子誰？｣

｢はあ？｣


隣にいた渡辺くんにそう聞くと、変な顔をされた。そんなにおかしい質問だっただろうか…。

友人の紹介で、ここ、QuizKnockに勤め始めて早数年。創立初期からこの会社に携わっている私は、いわゆるまあまあの古参であるはずだ。だから、当然社員の顔は把握している、と思っていたのだが。


｢…忘れたんですか？｣

｢いや、その、あはは…｣


苦し紛れに笑ってごまかしてみたが、渡辺くんは苦い顔をするだけだった。

たしかに、自分でも薄情だと思う。同じ仕事をする仲間なら、名前は度忘れしたとしても、顔くらいは覚えておくべきだろう。しかし、どれだけ頭の中で検索をかけても、何一つとして引っかからない。


おかしいなぁ…あんな特徴的な子、忘れるはずがないんだけど…。

重たげな黒の前髪に、頬の黒子が特徴的な涼し気な目元。シンプルな服装は、彼の体型によく合っており、スマートな印象を持たせる。


こちらの視線に気づいたのか、彼はにこりと笑って、


｢…はじめまして！新人の伊沢拓司です！よろしくお願いします、先輩！｣

｢え、あ、うん。よろしくね…？｣


大変元気に挨拶をしてくれた。彼へのイメージが、スマートなビーグル犬から人懐っこい柴犬へと変わった。





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