『優しさ』を忘れずに ページ19
少年は驚く少女に笑って言う。
「旧基地を探して見付けた。ほらね？僕は何でも分かる。試しに何か質問してご覧？何でも答えるよ」
少女は少し考えて震えた声で少年に尋ねた。
「なら妾は…これからどうすればいいの…？大切な人が妾のせいで死んだ。きっと…これからも同じ。妾が生きていい場所なんてあるの…？」
俺は胸が痛むのを感じた。
惨めに虐げられていた孤児院での生活を思い出した。
自分は悪くないのに折檻され、骨が折れる程殴られた時もあった。
そして、自分が生きていい場所なんてあるのだろうか？と何度も自問自答した。
俺は顔が歪むのを耐えながら痛む火傷の後を握った。
少年は言い聞かせる様に少女に言う。
「さっき言ったろ？この世には一ヶ所だけ君を必要としない場所があると。君は探偵社に入れ」
その瞬間少女の目に涙が浮かんだ。そんな少女に少年は告げる。
「異能が欲しいんじゃない。欲しいのはその『優しさ』だ。誰にも死んで欲しくなかったんだろ？だからそんなに苦しんでる。その『優しさ』があるから君を誘いたい」
その言葉に少女は堪らず涙を溢れさした。
そして少年が優しさに溢れた言葉を言う。
「能力なんて無くたっていい。その悲しみに価値があるんだよ」
その言葉が俺は羨ましいなと思った。
俺は表面上では森さんによくしてもらってる。だけど内面となれば別だ。
俺は森さんがどういう思いで俺を彼処に居させてくれるかも分かっていない。
もしかしたら何れ利用しようと思っているかも知れないのだ。
俺はそんな事を考えながら少女に少し微笑んで言う。
「探偵社で頑張れよ。その『優しさ』を忘れずにな。じゃあな」
その言葉に少女は何度も頷いた。
そうして立ち去ろうとした瞬間引き留められた。後ろを向くと引き留めたのは少年だった。
「君にはこれをあげる」
そう言って俺の手に白い野菊が装飾されたかんざしを乗せた。
「これは…母さんの」
あまりの衝撃に目を見開いた後俺は泣きそうになりながら礼を言った。
「ありがとう。もう戻らないと思っていた」
「どういたしまして。そうだ、僕の名前は江戸川乱歩だよ。君も、もしもの事があったら探偵社に来なよ？」
無邪気な少年、乱歩に俺は苦笑する。
そんな事が無いと良いけど
そう思いつつ俺は二人に手を振りその場を後にして俺はかんざしを見つめて呟く。
「これを着けてる時は遊郭の中の誰よりも美しかったなぁ」
俺の母は遊郭の美女だった。
そして俺はそんな母の元に生まれ育てられた。
母が死んだその時まで。
ーー
10000hit越え&中也さんの誕生日なので三話更新です！
【桐崎君にとっての周りの印象】
乱歩：唯一異能で一度自分の事を忘れた筈なのに覚えてくれた人物。推理だけで自分との関係を割り出した乱歩の事は本当に凄いと尊敬している。
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那戯田沢 亜須@グラブル中毒者(プロフ) - 倉の中の石さん» ありがとうございます！思惑通りに暗い過去と思って頂けてついガッツポーズを仕掛けました（笑）続編頑張りますね！！ (2019年7月8日 0時) (
レス) id: 480a6a9b45 (このIDを非表示/違反報告)
倉の中の石 - すごく面白いです。こんなに自然な暗い過去は久しぶりに見ました。続編も頑張ってください。 (2019年7月7日 17時) (レス) id: 873805d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
那戯田沢 亜須@グラブル中毒者(プロフ) - 鶴さん» 読んで頂きありがとうございます！更新頑張りますね！！ (2019年7月7日 14時) (レス) id: 480a6a9b45 (このIDを非表示/違反報告)
鶴(プロフ) - 初めて見たんですが、とっても面白いです！更新頑張ってください！応援しています！ (2019年7月7日 14時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
那戯田沢 亜須@スマホ使用不可で低浮上中(プロフ) - 夜美さん» ありがとうございます！まだ推敲中ですががんばりますね！！ (2019年7月5日 20時) (レス) id: a29dbc7b52 (このIDを非表示/違反報告)
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