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思ってしまった ページ15

その日から俺は森さんの所で助手兼医者の端くれをやる事になった。
森さん達の役に立つのは案外楽しい。
そう思いつつ薬品を棚に入れていると。

「Aく〜ん!ちょっと手が離せないから代わりにこの子の手当てをしてくれるかい?」

「ん、分かった」

俺は直ぐ様薬品を棚に入れて鍵を掛けてから急いで森さんの元へ行く。
其処には俺と同い年位の手首から肘にかけて大きな切り傷を作った少女がいた。
少女は痛みに涙を滲ませながら言う。

「ひっく…ぅ…!痛いです…早く治して下さい…ぐすっ!」

「あぁ、ちょっと待ってくれ。血は…止まっているな。消毒液と麻酔、それと縫合するための糸と針を持ってくる。大人しくしていくれ」

あまりの痛々しい表情だったが俺は慌てることなく急いで道具を取りに行く。

「あー何処に置いてたっけ…麻酔…」

まだうろ覚えのために少し迷ったが森さんが棚に麻酔と書かれた薬品箱を置いていてくれたおかげで分かりやすかった。
俺は少女の元に戻り麻酔を打ったあと消毒液を傷にかける。清潔なガーゼで余分な消毒液をふき取る。

「えーと…名前何て言うんだ?」

「あ、う、あかりです」

「あかりだな。俺が良いって言うまで目を瞑っててくれるか?」

「は、はい」

そう返事してくれたあかりに感謝しつつ目を瞑ったのを確認してから傷を縫合していく。
……人の皮膚を縫うってやっぱり変な感じがするな。
そう思いつつ縫い終わり口を開く。

「もういいぞ」

ソッと目を開き綺麗に縫われた腕を見てホッとした顔になったあと礼をしてくる。

「ありがとうございました」

「どういたしまして。その糸は治っていく間に消えてくからもう一度くる心配は無いぞ。それじゃあお大事に」

「はい!」

元気よく返事するあかりの顔を見て少し安心しつつ見送る。
帰り際にあかりが振り返って手を振って言う。

「この御恩は忘れませんよAさん!」

「……そうかよ」

俺は心の片隅で少し思う。
少ししか会って話してないのに忘れず恩を感じられたり、覚えていたせいで悲しまれたりしたくないな(・・・・・・)。
俺は周りの人が幸せである事の方が嬉しいしそれにあまり感謝されなれてないし…
そう思ってしまった。
俺は知らない。




このほんの少しの思いだけで異能が発動しこれから会う人々や少しの接点があった人々が悉く自分を忘れていく事を。




そして大切にしたいと思っていた二人に心配をかけ続ける事にになることを。




俺はまだ知らない。




ーー
今回は桐崎君の後悔の始まり回。
それと時間が無いので少し早めの更新ですみません(ー ー ;)

はじめまして……?→←幕間 弐


【桐崎君にとっての周りの印象】

乱歩:唯一異能で一度自分の事を忘れた筈なのに覚えてくれた人物。推理だけで自分との関係を割り出した乱歩の事は本当に凄いと尊敬している。


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那戯田沢 亜須@グラブル中毒者(プロフ) - 倉の中の石さん» ありがとうございます!思惑通りに暗い過去と思って頂けてついガッツポーズを仕掛けました(笑)続編頑張りますね!! (2019年7月8日 0時) (レス) id: 480a6a9b45 (このIDを非表示/違反報告)
倉の中の石 - すごく面白いです。こんなに自然な暗い過去は久しぶりに見ました。続編も頑張ってください。 (2019年7月7日 17時) (レス) id: 873805d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
那戯田沢 亜須@グラブル中毒者(プロフ) - 鶴さん» 読んで頂きありがとうございます!更新頑張りますね!! (2019年7月7日 14時) (レス) id: 480a6a9b45 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 初めて見たんですが、とっても面白いです!更新頑張ってください!応援しています! (2019年7月7日 14時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
那戯田沢 亜須@スマホ使用不可で低浮上中(プロフ) - 夜美さん» ありがとうございます!まだ推敲中ですががんばりますね!! (2019年7月5日 20時) (レス) id: a29dbc7b52 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:那戯田沢 亜須 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年4月19日 20時

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