Legend Story5 (ページ24)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:122,393 hit

7 ページ24

「身体横に倒すよ」

ズボンを下ろし、自分と反対側を向くように郁人の身体を倒す。

身体の下におむつが当たるように敷き、再び身体を仰向けに戻した。

「はい、ちょっと足動かすよ」

パッドのずれを直して、足の位置を直し、腰の部分におむつを巻く。

ズボンを上げると、郁人がふぅと息を吐くのが聞こえた。

「…おっけー。終わったよ。お疲れ様。」

布団を再びかけ直しながら、郁人に話しかける。

郁人は布団を肩まで引き上げ、俺と目を合わせることなく反対側を向いてしまった。

こりゃ大分機嫌を損ねてしまったかもしれない。
郁人だってやらなきゃいけないことだってわかってるから、何も抵抗はしなかった。
それでもおむつをするのはこちらの都合で無理強いされたことに違いはないから、そのジレンマから不機嫌に無言になるしかないんだ。

重い空気が流れる中

「郁人ー！うどん持ってきたよ!!」

バーン！と勢いよく良亮が部屋に入ってきた。

「……あれ、どしたの」

重苦しい雰囲気を感じ取った良亮が、きょとんとした顔で俺と郁人を見比べる。

「ん、ちょっと。……あれ、俺が作ったやつは？」

良亮のもつトレーの上にあるのは俺が作ったうどんのお椀じゃなかった。疑問に思って、というよりは話を反らしたくて良亮に問いかける。

「あ、あれ？美味しすぎておかわりしちゃった。あれ郁人のだったんでしょ？だから追加で作ったよ!!」

良亮は、自慢気に胸を張ってトレーに乗ったお椀を見せた。

「…じゃあ俺は飯食ってくるかな。良亮、郁人にそれ食べさせといて」

よっこらしょ、と膝に手をついて立ち上がる。こちらを向く気配のない郁人を布団の上から宥めるように数回優しく叩いて、良亮に後は頼んだと囁き、部屋をあとにした。

リビングのソファに座り、はぁと大きな息を吐く。
目を閉じ天を仰ぐと、涙を流す郁人の顔が瞼にはっきりと写った。

嫌がる郁人をあんなふうに無理矢理説き伏せて。しんどいはずなのに、甘えたいはずなのに、諦めたように目を合わせてくれなくなった郁人の顔を思い出しては胸がぎゅうと締め付けられて、俺はそんな考えを振り払うように立ち上がってキッチンへ向かった。

そこに残されていたのは、俺が作ったはずの、良亮に食べられたはずの、素うどんだった。