ゼルトザーム屋敷の冒険【オリジナル】 (ページ41)

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第４１話　夢から覚めて一日が始まる２ページ41

　翌朝、眠い目を擦って起き上がる。昨日起きた時間と同じお腹がギュルルルルと鳴り響いた。そういえば昨日はお昼もお夕飯も食べていない。胃が空っぽすぎて気持ち悪くなる。込み上げる吐き気をなんとか抑えながら、身支度を整えて朝食をとりにダイニングへ向かった。
　廊下を歩いていると、先を行っていたルー君と出会った。まん丸の目の下に、黒い隈を作っていつもよりボンヤリとしている。肩をトントンと叩いて、ようやくこっちを振り返った。

「ん……ぁ、エラちゃん……おはぁよう」

　フワアアァ……と長い長いあくびをするルー君。微睡んだ声が意味しているのは、圧倒的な疲労感だった。ぐしぐしと目を擦ってはいるけれど、目蓋が重力に逆らえなくありつつある。

「ルー君、昨日は何時まで起きていたの」
「んー……５時かなあ」
「ええ、２時間しか寝ていないじゃない！！」
「ん」

　またフワアアァーと大欠伸をするルー君。きっと、昨日の出来事を悶々と考えている内に眠れなくなったパターンだ。微睡んだ目はもう閉じかけていた。

「ルー君、朝ごはん食べたら寝なよ」
「そんな時間、ないよ」
「ダメだよ！ちゃんと寝なきゃ！！」
「へーき、アインシュペンナーでも頼んでおくから」

　そういう問題じゃないんだけどねルー君。寝てほしいんですよカフェインを取れって言っている訳じゃない。しかもちゃっかり甘いコーヒーを頼もうとしているし。

　半分寝かかっているルー君を引っ張りながらダイニングに入る。一番初めに目に飛び込んできたのは、ケチャップをバチャーと大量にかけたスクランエッグを幸せそうに頬張っているフリッツさんだった。この様子を見る限り、げ、元気……そう？

「おー、ルートヴィヒとエラ！おはよーさん」
「お、おはようございます」
「ん……店長おはよぉう」

　席に座って、私とルー君はフリッツさんにズイッと近寄った。おおう、と情けない声を上げながら、フリッツさんは口の端についたケチャップを丁寧にテーブルナプキンで拭いた。

「フリッツさん、お腹はなんともない！？」
「店長、息できている！？」
「お腹はなんともないってば、あの後ホルストさんに医務室に連れられたけれど、異常はなかったから返されたしな。あとルートヴィヒ、質問アバウトすぎんだろバリバリ呼吸してるっての」

　ほーら戻った戻った！と私達を元の場所に戻して、再びフリッツさんはスクランブルエッグを食べ始めた。ルー君と目があって、同時に安堵のため息をついた。
　このフリッツさんは、間違いなく本物だ。伊達に長い時間を共に過ごした訳じゃない。