第24話 当主との晩餐会5 ページ24
「彼はルーカス・ドルン。この屋敷でただ一人のシェフで我々全員の食事を賄っております。さあルーカス君、ご挨拶を」
「…………どうぞ、宜しく」
ルーカスさんは言葉数の少ない人なのかな。あまり目立つ事が好きじゃなさそうだし……
「へえ、貴方がこの料理をね! 凄いじゃないですか!」
いよぉっ、大統領! と言いそうな勢いでフリッツさんがパチパチと大きな拍手をすると、ルーカスさんはほんの一瞬目を開き肩をビクリと震わせた。「ど、どうも」という声でさえも少し震えている。この人、怯えているんだ。こういう場に慣れていないのかな?
「ご、ご当主……私はそのぉ……明日の仕込みがあるのでここら辺で……」
「構わない。明日の料理も楽しみにしているよ」
ジークヴァルトさんの言葉を聞くや否やダイニングから逃げるようにいなくなってしまった。人と関わりたくないのかな、いなくなる前に料理のお礼を言っておけば良かったや。
それからしばらくローストビーフを堪能して、一時間に若干満たない短い晩餐会はほとんど無言で終わってしまった。
ジークヴァルトさんは食事を終えると白いテーブルナプキンで優雅に口元を拭いて、こちらに笑いかけてから一番先にダイニングから出て行った。その途端、心臓が一気にバクンバクンと波打ち始めて、プハッと口から息を吐く。私、緊張していたんだ。知らず知らずのうちに息も止めていたみたい。
「うん、美味しかった」
ルー君もちょうど食べ終わったみたいでナイフとフォークを皿に置いて、ふーっと満足気にため息を吐いた。フリッツさんもワインボトルの底の底まで飲み干して満足しきった顔をしている。
「ルートヴィヒ、エラ、俺達も部屋に戻るとするか〜もう遅いしさあ?」
ふわあぁと眠そうにあくびをしてお酒に溶けた声。あーあ、こりゃ相当飲んだねフリッツさん。顔も若干赤いし、目だって半分閉じかけているよ。
「お客様、お戻りになられますか?」
「ん、そうしますわ〜」
酔いが回っているフリッツさんはホルストさんに向かって二ヘラ、とフニャけた笑顔を向けた。もう寝かかっているフリッツさんをルー君と私が両方から支えて部屋へと連行する。部屋の戸を開けて、ベッドに寝転がせて戸を閉める。
あー、疲れたあ……ただでさえ色んな事があって疲れているというのに何故酔っ払いの介抱までしなきゃいけないのか。
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ルツ・ヒューイット(プロフ) - ぼうきれ/新藤緋色さん» なるほど、ありがとうございます! (2021年4月3日 18時) (レス) id: 8219e67f68 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - ルツ・ヒューイットさん» 確か、エラという名前には美しいという意味があったはずです。平凡な見た目でも芯の真っ直ぐな美しい子、というイメージで名付けました。 (2021年4月3日 18時) (レス) id: 5f459e3a39 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - 主人公のエラちゃんのお名前って可愛いですよね。この名前にしようと思ったきっかけは何ですか? (2021年4月3日 18時) (レス) id: 8219e67f68 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - ルツ・ヒューイットさん» そこら辺もまだ語れません……今後に乞うご期待です! (2020年11月4日 10時) (レス) id: 9dfed805b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - そういえば思った事ですが、幽霊や心霊現象も含まれますか? (2020年11月4日 7時) (レス) id: ac128bc03f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:新藤緋色 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/homepageofSHS/
作成日時:2020年3月29日 23時