第22話 当主との晩餐会3 ページ22
「おや、食事が運ばれて来ましたよ」
燻んだ緑色の瞳の先にはホルストさんがいた。シャンデリアの光を浴びて輝く真っ白なお皿を持って、彼の腰辺りに同じようなお皿が三枚載った小さなワゴンがある。
「お待たせ致しました、今晩のメインディッシュでございます」
わー、ドキドキしてきた。食事一つだけでこんなに緊張する事ないよね……いつもと違う場所で違う服で食べるご飯……そりゃ緊張するか。でもなんの料理が運ばれて来たんだろう? ホルストさんは手に持ったお皿をジークヴァルトさんのプレースマットの上に置いているし、ワゴンは遠くてなんの料理か判別し難い。それにお皿をジロジロ見るの、なんか恥ずかしいからこれ以上はやめよう。確かにお腹は空いているけれど、まるで卑しん坊みたいだもん。
それにしても、ホルストさん一人だけで四人分のお皿を運ぶのって大変じゃないのかな? うーん……沈黙に耐えられないから頭の中で色々考えちゃう。
フリッツさん、ルー君ときて、最後に私のプレースマットにお皿が置かれた。
一つの汚れも見当たらない、ニレの木の模様が入った立派な陶器。その上に薔薇の花を思わせる形でローストビーフが盛られていた。グレイビーソースは薔薇の蔦のように、ホースラディッシュは薔薇の葉のように飾られていて、その美しさに思わずまじまじと眺めてしまった。芸術の中に少しの可愛らしさもある。
たた、食べるのが勿体無いなあ……!!
そうは思っていても、お腹の虫は早く食べたいとせがむし、外側はよく焼けていて中がほんのり赤みがかっている見ただけで美味しいと分かるローストビーフも「僕を食べて」ってお願いしているように見える。「Eat Me,EatMe」ってまるで不思議の国のアリスみたい。まあ、ローストビーフもイギリス料理らしいし良いかな。いや何を言っているんだろう私。
「それでは皆さん、頂きましょう」
当主の掛け声と共に晩餐会は本当の始まりを告げる。
さあ、待ちに待った夕ご飯だ! テーブルマナーに自信はないけれど、他人に不愉快な思いをさせるほどじゃないと思うし大丈夫だよね。
ローストビーフを一枚とって、ナイフでホースラディッシュを掬ってお肉の真ん中辺りに落とし……これをそのまま包んでフォークで刺して、グレイビーソースをちょんと漬ける。
うーーん……これで当たっているのかなあ、食べ方。なんせローストビーフなんてそんなに食べないし、ましてやこんなに堅苦しい……じゃない、礼儀正しい場面で食べる機会ないもんね。悩んでいても仕方がない、食べようっと。
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ルツ・ヒューイット(プロフ) - ぼうきれ/新藤緋色さん» なるほど、ありがとうございます! (2021年4月3日 18時) (レス) id: 8219e67f68 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - ルツ・ヒューイットさん» 確か、エラという名前には美しいという意味があったはずです。平凡な見た目でも芯の真っ直ぐな美しい子、というイメージで名付けました。 (2021年4月3日 18時) (レス) id: 5f459e3a39 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - 主人公のエラちゃんのお名前って可愛いですよね。この名前にしようと思ったきっかけは何ですか? (2021年4月3日 18時) (レス) id: 8219e67f68 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - ルツ・ヒューイットさん» そこら辺もまだ語れません……今後に乞うご期待です! (2020年11月4日 10時) (レス) id: 9dfed805b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - そういえば思った事ですが、幽霊や心霊現象も含まれますか? (2020年11月4日 7時) (レス) id: ac128bc03f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:新藤緋色 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/homepageofSHS/
作成日時:2020年3月29日 23時