第2話 ルートヴィヒとエラ ページ2
「この街で大雪が降ったなんて珍しいよね」
朝食の準備をしていた私に、幼馴染みのルー君はいつもの様に話しかけた。
ルートヴィヒ・フェルカー。この名前、凄く格好いいと思う。
綺麗な青空と同じ色のフワフワとして綿飴みたいな癖毛に、鮮やかな紫色の瞳を持つまん丸の目。可愛い顔をしているからお店でも人気なんだよね、当の本人は何にも気にしていないけれど。
窓越しに銀世界を見ながら「昨日も今日も凄く寒いよね」なんて言ってルー君は呑気にチョコレートバーを齧っている。
「ご飯の前にお菓子食べるのやめてって言ってるじゃん」
「大目に見てよエラちゃん。僕はこれ食べないと朝迎えた気がしないの」
またそうやって言う。言い訳の仕方は孤児院にいた時から全然変わっていないなあ。もう15歳なんだから、いい加減ご飯前のお菓子やめて欲しいんだけど。
それにしても、今日は本当に寒い。昨日の大雪のせいで1日中店じまいをしていたくらいだから、外には沢山の雪が積もっていた。日光を反射して眩しい。銀世界って呼ばれる意味が、何となくだけど分かる気がする。
「……エラちゃん、焦げ臭い」
「え? あ、ああああ!! 嘘、嘘どうしよう……目玉焼き焦げちゃってる!!」
「目玉焼き焦がすの、ある意味天才だと思うけど」
ポク、とチョコバーを齧る音がやけにハッキリと聞こえる。火を消した時にはもう遅くて、目玉焼きはもう丸焦げになっていて食べられそうになかった。
あー、もう。しっかりしなさいエラ・リースフェルト、雪に見惚れている場合じゃないでしょ。
「顔洗って目を覚ましてくる」
「行ってらっしゃい」
石鹸を泡立てて顔を洗ってからバシャバシャと水で流す。柔らかいタオルで顔をポンポンと拭って、鏡の中の自分を見た。ポニーテールにした黄色い髪には枝毛があるし、ピンクの瞳を持つ垂れ目は寝不足のせいで若干クマがある。眉毛も整えてないから太い。「エラちゃん、顔が可愛いのにお手入れしてないでしょう? 勿体無いわよお!」って近所のおばさんに言われた事を思い出した。
お手入れなんて、髪をブラシで梳かして顔を洗うだけで充分じゃないの? お母さん、毎朝そうしてたけど。
──ああ、充分なわけないか。充分だったら、お父さんが別の女の人と付き合うわけないもんね。あの女の人、髪の毛がサラサラだし、お目目も綺麗だった。化粧もしてたし、まるでテレビに出てくる女優さんみたいだった。
……もう思い出すのやめよう。不倫したお父さんの事なんて記憶にも残したくない。
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ルツ・ヒューイット(プロフ) - ぼうきれ/新藤緋色さん» なるほど、ありがとうございます! (2021年4月3日 18時) (レス) id: 8219e67f68 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - ルツ・ヒューイットさん» 確か、エラという名前には美しいという意味があったはずです。平凡な見た目でも芯の真っ直ぐな美しい子、というイメージで名付けました。 (2021年4月3日 18時) (レス) id: 5f459e3a39 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - 主人公のエラちゃんのお名前って可愛いですよね。この名前にしようと思ったきっかけは何ですか? (2021年4月3日 18時) (レス) id: 8219e67f68 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - ルツ・ヒューイットさん» そこら辺もまだ語れません……今後に乞うご期待です! (2020年11月4日 10時) (レス) id: 9dfed805b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - そういえば思った事ですが、幽霊や心霊現象も含まれますか? (2020年11月4日 7時) (レス) id: ac128bc03f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:新藤緋色 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/homepageofSHS/
作成日時:2020年3月29日 23時