血と、 ページ2
「...もしもし」
携帯電話に着信があった。普段、誰からも連絡がくることのない私の携帯にわざわざ電話をかけてくるのはあの男くらいだろう。
加茂「様子はどうだ?まだ此方に戻って来れそうにはないか」
加茂憲紀、私の許嫁。加茂家は次第に権力を持ち始めている白峰家が鬱陶しくて仕方がない。だから、次期当主である私と彼が結ばれてしまえば白峰家の家系は絶えることとなる。
「はい、今のところ何ら変わりはございません。次にそちらに戻れるのは夏の休暇中になるかと」
加茂「そうか。それならば久しぶりに祭りにでも行ってみるか?お前の神社でも毎年やっているだろう。日程を調整してもらうよう声をかけておく」
加茂さんは、本当に私と結婚するつもりみたいだ。私にその気が無いことぐらい気がついている筈なのに。
「...分かりました。お祭りの時は狩衣ではなく浴衣を召してくださいね。私が加茂さんに似合う浴衣を用意しますから」
白峰は加茂に逆らうことができないから、私にその気が無くても関係ないのかもしれない。
浴衣、か。そういえばしばらく和服自体に袖を通していなかった。向こうにいる時は常に袴を穿いていたっけ。
...伏黒には紺色の浴衣が似合いそうだ。
どうしてふとこう思ったのか。自分でも分からなかった。
加茂「神楽?聞いているか」
つい、考え事に没頭していた。
「ごめんなさい。ぼーっとしていて」
加茂さんは優しい。それは誰よりも私が知っている。
加茂「あまり無理はするな。何かあればすぐに言え。昔から言っているだろう」
それなのに私は、彼の優しさを踏みにじろうとしている。
加茂「それじゃあ、また」
...通話が終わったことを告げる音が、ひたすら鳴り続ける。
私はこのままで良いのだろうか。
この行為は加茂さんへの裏切りに値するだろう。
私は、どうすれば良いのだろうか。
私のすぐ横に座る男が、無情にも通話を終了する画面をタップした。
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低体温(プロフ) - 加茂さんカッコイイですよね!!私加茂さん推しです!! (2021年2月20日 2時) (レス) id: df64c86b58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るいてゃん | 作成日時:2019年9月9日 15時