【あんさんぶるスターズ】よろしくBROTHER

76.つれられて ページ29

菜穂さんの声で１テンポ遅れて皆が私に気付く。

でも、遅い。



グイッ

『っ！？』




自分がドアを開けて逃げる前に、ドアの手前で誰かが私の手首を掴み、走り出したから。



空いている片方の手で、全開のワイシャツをギュッと抑える。

興奮してるのか、苦しくない。


目の前を走るのは男の子。
柔らかい栗色の髪の毛。


校舎から出て、裏庭に入ると走っていた足は止まり男の子は私の方へ向いた。



ずば抜けてかっこいいわけじゃないけど、普通にかっこいい男の子。

若干幼さが抜けていない、中性的な顔立ち。



男の子は学ランを脱ぎ、私に被せた。

私は遠慮なく、学ランを羽織らせてもらう。



『あ、ありがとう』

お礼もちゃんと兼ねて。



一瞬男の子はポケ、とした顔になり、その後また顔を締めた。


「うん、今からまた動くけど平気？」

可愛い眉毛をハの字にして笑う。
優しそうな好少年だ。


『平気、動ける』

また、向きを変えて今度は歩き出す。


見えてきた景色は、

『あれ、？』



私が散々お世話になった、綺麗な校舎。

戸惑いなく、校門をくぐる。



受付の人も、事情を言わなくてもどうぞ、と言う。


スムーズに校舎内に入り、階段を上り、たどり着いた先は、


『せ、生徒会室？』

そう、立派な扉には“生徒会室”と書いてある。




ガチャ、と男の子が扉を開ける。

そこにいたのは、なずなに英智さんに……敬人さん。



ってことは、ここはアイドル科……？

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