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壊れたお城 ページ50

次に手を覚ましたら、そこは見慣れない白い天井だった。

医務室かなとも思ったけど、周りは慌ただしい。

ナース服の方が忙しなく動いてるから病院かな…




『…Aっ!』


「まゆちゃん…」


『今、先生呼ぶな』


「私…」


『体調悪くなっちゃって、点滴が必要だったから病院来たんやで。

東京の病院じゃないから、ちょっと見慣れないだろうけど…』


「ぁ……川栄さん達は…?」


『今、手術中やで。

大丈夫、怪我は酷くないみたい』


「そうなんだ…」




横には、心配顔のまゆちゃん。

やっと、意識がハッキリしてきた。

もう気持ち悪くはないけど、そしたら時間差で恐怖が襲ってくる。

本当に怖かった。

悪い夢を見ているようだった。

いや、まだ悪夢の中にいるようだ。






『A…っ!』


「ママ…っ!?」


『お母さん、この度は…』


『大丈夫!?怪我はない?』


「私は大丈夫だけど、川栄さん達が…っ」


『Aが無事なら良かった…っ』


『この度は本当に申し訳ございませんでした…!』


『Aはなぜ、病院にいるんですか?

怪我はないんですよね?』


『同じレーンのメンバーが怪我をしてしまったものですから…

ショックを受けて、少し体調を崩してしまったので病院で治療を…』


『そうですか…怖い思いをしたのね』


「怖かった…」




突然、ドアが開いたかと思ったら、まさかのママが登場。

事件を聞きつけて、東京から岩手まで飛んで来てくれたらしい。

私に怪我はなかったのか、心配して。

ちょっと安心した。

ママは本気で、私のことを心配してくれてる。




『もう大丈夫なの?』


「うん、もう良くなったから大丈夫」


『私、飲み物買ってきますね』


『いいえ、結構です。

今日はもう、連れて帰りますから』


「え、でも…」


『こんな所にいるから、危険な目に遭うのよ?

ママと一緒だったら、絶対有り得ないんだから。

ママだけは、Aのことを命懸けで守れるの。

だから、一緒に東京帰るわよ』


「…うん」


『手続きはこちらで済ませておきます。

本当に申し訳ございませんでした…!』


「まゆちゃん、そんな…」


『A、帰るよ!』




違う、何かが違う。

ママは、心配してるんじゃなくて怒ってるんだ。

いや、心配してたのは本当か…

でも確実に、運営側に不信感を抱いて、それが怒りに変わってる。

不穏な空気が漂う。

何とかバランスを保っていたお城が、バラバラと崩れる音がした。

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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年3月1日 23時

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