身体は嘘をつかない ページ19
回復したと思っていたけれど、体は案外正直だ。
アドレナリンが抜けた体は、全く役に立たない。
やっぱり、私の体は限界だったんだなって身に染みた。
コンサート終わり、玲奈さんと別れたら急に体調が悪くなった。
リハ終わりと同じ症状。
フラフラして、体に力が入らない。
「…っ」
高橋「おっと…間に合ったぁ」
「たかみなさ…」
高橋「もぉ、無理しないって言った！」
「ごめんなさい…」
高橋「帰る前に医務室寄ってこ」
「でも、たかみなさん時間…」
高橋「今日はライブにお客さん呼んでるからまだ帰れないのよ。
医務室に来てもらうように伝えたから、とりあえず行こうね」
貧血と脱水だろうなって思った。
診断が下る前後から、よくこの症状はあったから。
これ以上体が動くとは思えないから、お言葉に甘えることにした。
高橋「コンサート中は平気だった？」
「アドレナリン出てたみたいで…」
高橋「ライブってそうだよね」
「私、やっぱり今までの体じゃないんですね…」
高橋「だいぶ痩せちゃって体力も落ちてるだろうからね」
「…でもまだ、自分が痩せすぎって実感はないです」
高橋「そっかぁ」
「体がしんどいのは辛いし、治すためには食べなきゃいけない。
頭では分かってるけど、食べると太るから。
太ると困るのは自分だし、だったら食べずにしんどい方がマシかなって。
細くいなきゃいけないし、太ったら価値がなくなるから…」
高橋「まだ食べるの怖いかぁ…」
2人の兼任解除が発表された。
納得はしていたけどやっぱり心細くて、つい弱音を吐いてしまった。
自分で決めたことなのに、心が揺らぐ。
意地でもあったから。
体調を崩したから兼任辞めた、2人が辞めたから辞めたとか言われたくなかった。
ママは、今の状態を見たら辞めろって言う。
診断が下っても言わなかったのが奇跡なくらいだ。
2人が解除されたら、私にも辞めろって詰めてくるはず。
だから辞めたくない。
高橋「A…？」
「辞めたくないのに…っ」
高橋「大丈夫よぉ、大丈夫大丈夫」
「辞めることになったらどうしよう…私、なんで兼任…っ」
高橋「ゆっくり深呼吸しようね、大丈夫よ〜」
「ママになんて言うか、考えてなかった…」
心も体も、ボロボロと崩れ落ちていく。
元の自分には戻れない気がした。
それでも、兼任を辞めたくはなかった。
もちろん、乃木坂も。
ボロボロの状態でも、意地だけはあった。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年3月1日 23時
