69小節目 ページ29
屋上のドアを開け、外に出た私は目を見張った。もうどこからつっこんでいいのかわからない。まずヘリポートのど真ん中にライトアップされたピアノがあり、しかもそれは高級なグランドピアノだった。どうやって運んだのだろう。いや、その前になぜピアノなのだろうか。さらに、なぜかレオはスーツを着ている。考えても納得できる答えが出ずに固まっていると、私に気付いたレオがこちらへやってきた。
レオ「お、来たな〜！ A！ 待ってたぞ〜」
A「ちょっとこれどういう状況なの⁉ ていうか、どうして連絡くれなかったの⁉」
レオ「まあまあ、落ち着けって。とりあえずここ座れよ」
レオはそう言い、ピアノ椅子を引いて私を座らせた。するとレオはひとつ深呼吸をして私の目を真っすぐに見てさらにこう言った。
レオ「これから、おまえに曲を贈るから、どうか最後まで聴いてほしい」
そう言うレオの顔はいつになく真剣で頷くほかなかった。彼は私が頷いたのを確認すると少しだけ微笑み、ピアノに向き直った。それから静かに鍵盤に指を置いた。
曲が、始まる。
レオのブレスが聞こえ、鍵盤が弾かれる。曲の世界に惹き込まれるのに、その一音で充分だった。鼓膜を震わせるレオが弾くピアノの音、歌声、街の雑多音、そのどれもが心地よかった。でも、それだけじゃない。
この曲は、私とレオが初めて出会った時の曲だった。前奏も歌詞もアレンジされていて、レオが歌っているのは私との思い出の数々だった。時折、るかちゃんに手伝ってもらっていた作詞も、最近では調子よく自分ひとりで書いていた。そのせいなのだろうか、歌詞がストレートに刺さってきて、もう泣きそうだ。いや、もう泣いていると思う。自分がどんな状態なのかもわからないほど、思考も心も色々な感情で埋め尽くされていた。
最初は不安だった。でも、あなたの手を取ったら不思議と力が抜けた。
あなたのそばに居たいと思った。自分の変化を見てみたかったから。
それでも変わる勇気が私にはなくて。それなのに、あなたが背中を押してくれた。
一歩踏み出したその先は、キラキラと輝いていた。そこに立つみんなを支えたいと思った。
変わり始めた自分と周りの期待との差に押しつぶされそうになった。そして、あなたを傷つけた。
またみかんに背中を押されて、あなたの傷に少しだけ触れた。
もう一度絆を結び直した。
桜の木の下であなたに大好きと言った。
お互いに少しずつ大人になっていった。
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明瞻(あけみ)(プロフ) - 名も無き読者さん» 長らく気が付かずすみません！ありがとうございます!!!!最後まで大切に大切に描いてゆきますので、どうぞよろしくお願いいたします！ (2022年2月9日 13時) (
レス) @page27 id: b0e4b10a69 (このIDを非表示/違反報告)
名も無き読者 - この作品大好きです！無理しない程度に頑張ってくださいね。続きが楽しみです (2022年1月27日 0時) (レス) @page26 id: 1a80ca11ab (このIDを非表示/違反報告)
明瞻(あけみ)(プロフ) - 奏さん» 8月30日！？全然気付かなくてすみませんでした！コメントありがとうございます！引き続き、この曲を楽しんで頂けると幸いです！ (2021年10月14日 22時) (レス) id: b0e4b10a69 (このIDを非表示/違反報告)
奏 - とっても面白かったです！ (2021年8月30日 9時) (レス) id: 910795ccc3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：明瞻(あけみ) | 作成日時：2021年6月15日 13時
