264 ページ14
、
Aは図書室に戻ってまた課題を広げていたが、当然集中できなかった。いまごろ談話室では、フレッドとジョージの友人たちが、誕生日パーティーの準備をしているに違いない。時計は午前九時を指していた。Aは羽ペンを机に置いて、深いため息を吐いた。
窓の外は爽やかな晴天で、春の訪れを報せている。差し込む太陽の光で体がポカポカしていたのに、心はどこか冷え切っていた。ずくずくとした胸の痛みをなんとかして抑える方法が、課題に集中すること以外に思いつかなかった。
「やっぱりここにいたな」
突然背後から声がかかって、Aはびくっと肩を揺らした。振り返ると、一時間ぶりのフレッドとジョージが立っていた。もうクィディッチのユニフォームから着替えて、ついでにシャワーも浴びてきたようだ。
二人は落ち着いた様子で、Aの隣に腰掛けた。Aは机の課題に目を向け、二人の方を決して見ないようにした。
「ごめんA、パーティーのこと、もっと早く知らせるべきだったよな？」
ジョージが眉を下げながらやさしく謝った。
「でも、俺達も知ったのは昨日なんだ。最近、Aとあんまり話せなかっただろ？」
Aが膝の上でぎゅっと拳を握った。
「A、ごめん──」
「別に怒ってない」
Aは自分の膝を見つめたまま言った。視界が少し滲んだが、唇を噛んで一呼吸おいてから、言葉を続けた。
「怒ってるんじゃない。ただ私は……フィオナや他の人たちみたいに、プレゼントもなにも用意できなかったから」
「そりゃ、俺達の誕生日を知ったのはついこの間だったじゃないか！それに、俺達がプレゼントはいらないって言ったんだ」
「でも！」
鼻を啜ったAは、二人から顔が見えないように深く俯いていた。真っ黒な髪がさらりとAの目元を覆い、その隙間からぽたぽたと水滴がたれて、Aの手の甲を濡らした。
「私よりフィオナのほうが、ずっと二人のことを分かってる。それが……悔しい。わたしも……わたしもちゃんと祝いたかったのに！」
泣きながら言葉を連ねるAを見て、フレッドとジョージは少しの間黙り込んだ。
「A」
フレッドが名前を呼んで、うつむいているAの肩にそっと触れた。Aが涙で濡れた顔を上げて二人を見た。二人は予想外なことに、この上なく嬉しそうな顔をしていた。
、
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1092人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
太陽(プロフ) - めちゃくちゃおもしろいです！！作者さんのおかげで、フレッド＆ジョージの良さに気づけました！！まじで最高です！ (2月18日 0時) (
レス) @page46 id: 18ff82607c (このIDを非表示/違反報告)
鵲(プロフ) - セラピーさん» うわー！！私の作品がきっかけになれてとてもうれしいです！！ありがとうございます😭😭💕更新頑張ります！！ (1月31日 5時) (レス) id: 144fc818ef (このIDを非表示/違反報告)
セラピー(プロフ) - とっても面白いです。この作品に出会ってからフレッド＆ジョージの素晴らしさに目覚めました。続き頑張ってください！ (1月30日 21時) (レス) id: c35619f4b1 (このIDを非表示/違反報告)
鵲(プロフ) - ますしんさん» ウワー！ありがとうございます！😭長いのに一気に見ていただけて…嬉しいです…💕ありがとうございます…！更新おまたせしてしまっていますが、がんばります…！！！！😭💕 (1月29日 7時) (レス) @page50 id: 144fc818ef (このIDを非表示/違反報告)
ますしん(プロフ) - この作品がとっても大好きになってしまいました。続きが気になって気になって夜も眠れません…でもご無理せず！応援しております！！！ (1月22日 1時) (レス) id: 3a092db897 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鵲
| 作成日時：2023年11月15日 3時
