985 ページ35
、
「店閉めるまで上にいれるか？」
「うん」
おばさんたちが店を出たすぐあと、Aはフレッドから部屋の鍵を受け取った。
「散らかってるけど、足の踏み場はあるはずだ」
「試作品の商品には触るなよ。危ないから」
「あと、鍵、閉めておけよ！最近物騒だからな。俺達は合鍵があるから」
二人の忠告に、Aは鍵を握りながら頷いた。
店の上にあるアパートまで上がり、Aは扉に鍵を差し込んだ。中に入ると、まず最初に火薬の匂いがした。隠れ穴にあるフレッドとジョージの部屋と、ほとんど同じ匂いだ。
中は小さめの部屋だったが、フレッドとジョージの二人で寝泊まりするくらいには十分な広さだった。部屋の隅にはダンボールが置かれ、注文書やらなんやらが散らばっていた。ソファーの背もたれやベッドの上に、脱ぎ捨てられた服がかけられていた。店の経営が相当忙しくて、部屋の掃除もままならないらしい。
Aは近くのソファーに腰を下ろし、きょろきょろ辺りを見回した。左手を置いた場所にあった服に気づき、Aはそれを掴んだ。どちらのものかは分からないが、どうやら、仕事中に着ているシャツらしい。Aはそれをじっと眺めて、すんと匂いを嗅いだ。火薬と、二人の匂いがした。なんだか嬉しくなって、Aはそれをぎゅっと抱き締めた。
そのままソファーに横になると、心地よさで眠気に誘われた。時計のチクタクという音だけが部屋に響く。下はあんなに賑わっているのに、ここはとっても静かだった。Aはしばらくうとうとしていたが、やがて、そのまま眠ってしまった。
─────
「あー、疲れた」
夕方、店を閉めたあと、フレッドとジョージは上への階段を登りながらため息を吐いた。念願の悪戯専門店を経営するのはとても楽しかったが、疲れるのも事実だ。
「しかし今日は最高の癒やしが俺達を待っている！」
そう言いながらフレッドがうきうきして、扉に鍵を差し込んだ。
「あれ、開いてる」
フレッドが首を傾げ、それからジョージと目を見合わせた。
慌てて扉を開け二人が中へ入ると、もう夕方だというのに中は暗かった。
「A？」
まさか、と最悪の事態が一瞬頭をよぎったのもつかの間、寝ぼけたような声が暗がりの中から聞こえてきた。
、
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1071人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鵲(プロフ) - くまさん» わ…！ありがとうございます！😭😭お待たせしてしまっていて本当に申し訳ないです…！ありがとうございます😭❤️ (2023年2月16日 7時) (
レス) id: 144fc818ef (このIDを非表示/違反報告)
くま - いつも楽しく読ませていただいております。最近映画見返したばかりなのでこの作品が癒しになっててすごいスピードでマハってます、、🧎また続き見れるの本当に嬉しいです！応援してます❤️ (2023年2月6日 20時) (レス) id: eddb428a3a (このIDを非表示/違反報告)
鵲(プロフ) - ぽまさん» 作者ページの方に記載しましたのでそちらを見ていただけると助かります〜！！ (2023年2月5日 6時) (レス) id: 144fc818ef (このIDを非表示/違反報告)
鵲(プロフ) - 名無し68593号さん» お久しぶりです〜！ありがとうございます😭😭🙏お待たせしてしまい申し訳ありません！😭😭😭 (2023年2月5日 6時) (レス) id: 144fc818ef (このIDを非表示/違反報告)
鵲(プロフ) - rapierさん» ありがとうございます😭😭お待たせしてしまい申し訳ないです🙏更新頑張ります😭😭 (2023年2月5日 6時) (レス) id: 144fc818ef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鵲
| 作成日時：2022年9月7日 3時
