046 ページ46
、
Aは少し顔を赤くしながらあたふたした。
「あ、あの、あのな、別に深い意味はないんだけど……私──ただ──だ、誰かに、甘えてみたくて……ううん……ごめん……やっぱり、なんでもない……」
上手く気持ちを伝えられずに肩を落とすAを見たフレッドがふっと吹き出して笑った。Aが余計に恥ずかしくなって縮こまると、フレッドが腕を広げた。
「いいぞ。ほら」
Aは少し戸惑って、持っていた本を閉じて床に置くと、床に手をついてフレッドの方に身を乗り出した。どうすればいいのかわからずフレッドをじっと見つめて目を泳がせるAの体を引き寄せて、フレッドがやんわりと抱き締めた。
ふわっと香るフレッドの匂いと、背中に回された腕の温もりで、心がぽかぽかした。Aはフレッドの肩に顔を埋めたまま、ゆっくりフレッドの背中に手を回した。とても心地が良かった。ハグがこんなに心地の良い、幸福を得られるものだなんて、思っても見なかった。
「フレッドはあったかいな」
「そうか？」
「うん。すごく落ち着く」
Aが微笑んだ。フレッドの燃えるような赤毛がAの頬に触れて少しくすぐったくなった。しばらくしてAが腕を離した。
「ありがとう、フレッド」
「ああ」
フレッドはにっこりすると、またAの頭を優しく撫でた。
「甘えたいときはちゃんと甘えろよ」
─────
クリスマス休暇になった。Aはホグワーツ特急に乗り、キングズ・クロス駅へ向かった。オリヴィアが列車に乗っていないかなとAは密かに期待したが、どうやらオリヴィアは、クリスマス休暇、ホグワーツに残っているらしかった。
駅には母のエリザと、父のアーロンがいた。ドラコの父、ルシウスと話をしている。Aは体がこわばった。文句を言われないように背筋を伸ばし、身なりを整えてから、母と父のもとへ向かった。
「かあさま、とうさま──ただいまかえりました」
Aがそう言うと二人が振り向いた。何を言われるのか不安で仕方がなかったが、二人は、駅で怒鳴るようなことはしなかった。上品さに欠けると思ったのだろう。
「では、ルシウス、これで失礼する」
「ああ、では、また」
ルシウスが張り付いたようなにっこり顔を向け、手を振った。Aは母と父が歩いていくあとを急いで追った。
、
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 718人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鵲(プロフ) - 秋さん» 私の趣味です…🙏🙏🙏 (1月21日 16時) (
レス) id: 144fc818ef (このIDを非表示/違反報告)
秋 - とても面白いのですが、主人公の口調が男の子っぽいのには何か理由がありますか？？ (1月21日 15時) (レス) id: fd804455da (このIDを非表示/違反報告)
椛(プロフ) - まだ初め部分しか読んでいませんが、こちらもとても面白い物語だと確信しているのですごく楽しみで、また一気読みになりそうです。こんな素晴らしい作品を作っていただきありがとうございます。 (2022年1月31日 18時) (レス) id: 6f2367cc34 (このIDを非表示/違反報告)
椛(プロフ) - 随分遅れてしまいましたが新作おめでとうございます。前作(愛憎のフィナーレ)から飛んでこの作品を見つけました。前作はとても素晴らしい作品で何度も涙ぐみながら一気読みしました。そしてそんな物語を作れる作者様の新作！ (2022年1月31日 18時) (レス) @page10 id: 6f2367cc34 (このIDを非表示/違反報告)
鵲(プロフ) - メロンソーダさん» ありがとうございます！！わわ！！過去作も…！！ありがとうございます！うれしいでず😭😭🙏💕💕 (2021年10月20日 20時) (レス) id: 144fc818ef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鵲
| 作成日時：2021年10月8日 3時
