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あれからジョングクは殆ど店に入り浸ってる。
ダンスを踊って女の子に口説かれて、
不機嫌そうに眉を顰めて2階までやって来る。
それがお決まりになってきた。
「また口説かれてたの?」
「見てたなら助けてくれない」
「私が睨まれて終わりでしょ」
「彼女いるからって言えるじゃん」
「多分その場しのぎだよ、それ」
私の居ないところで結局また口説かれるって。
「そういえば、ずっとここに居ていいの?」
「いーよ。Aいるし」
「なにそれ」
「ていうか何でそんな事聞くの」
「部活あるでしょ?美術部の。」
ジョングクの絵は何度か見たことある気がする。
校内に展示されてるものに限るけど。
どんな絵だったか思い出そうとして、気づく。
ジョングクの目が翳ってることに。
「……別に、いいって。たかが部活だし」
「………」
「幽霊部員なんて俺以外にもいるよ」
その目が、確かに傷ついてる。
……聞いて欲しくなかった?部活のこと。
別に深い意味も悪気もなかった
でもきっと、ジョングクにとっては
まだ私が踏み込んで良いことじゃなかったんだ
「俺、ちょっと飲み物取ってくる」
「わかった……」
あぁ、聞いてごめんって言いそびれた。
…ごめん、って可笑しい?
どれが正解なのか分からない。
でも不用意に心に触れようとするのは間違いだった
顔を背けたまま私を一度も見ずに
立ち上がったジョングクの背を見届ける。
「はぁ……」
「あれ、溜息吐いてどうした?」
「ホソギオッパ」
「ジョングクどっか行ってるし」
「飲み物取りに行きました」
それは私から離れる口実だろうけど。
不貞腐れる私の頭をホソクさんは
軽く笑いながら撫でてくれた。安心する。
「私、距離感ないのかな。人に対して」
「テヒョンもそんな感じだしなぁ」
「あれは許されるっていうか」
「Aは仲良くなるまでは壁あるよ」
そうなのかな、自覚ないけど。
ただ興味ないだけなんじゃないかな。人に。
「でも仲良くなりたい人には距離詰めるかもな」
「……直した方がいいよね」
「そのままで良いだろ。Aの良さだし」
でもそれで誰かを傷つけたら意味ないよ。
そんな言葉はギリギリ飲み込んだ。
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作成日時:2024年3月17日 13時