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「…なんてね。何でAがそんな顔すんの」
「また仏頂面してた？」
「じゃなくて困った顔してた。」
私の気持ちを察したように
強気な笑みを見せるジョングク。
……そんな顔してたかな。
確かに少し意外だったけど。
「てっきりAも俺と同じだと思ってた」
「同じ？」
「うん。でも違った」
「………」
「Aは俺と似てるけど、同じじゃない」
そう言葉を零したジョングクは
何かを諦めたように空中を見た。
「……同じじゃないのは、当たり前じゃない？」
「まぁ、そうかもね」
だって全く同じ考えの人とか居ないでしょ
そう思うけどジョングクには届かない気がした
私の言葉が、何にも届いてない
だから空っぽな言葉しか返ってこないんだ
……それがちょっと嫌だなんて思ってる。
何でだろう、殆ど学校で話したこともないのに。
「なに。甘えてる？それ」
「別に。疲れただけ」
「体力なさすぎ」
「ジョングクと比べないで」
「確かに」
ジョングクの肩に寄りかかると
その目がやっと私の方を向いた。
「あのさ、」
「何？」
「おまえ、恋愛ってした事ある？」
「………は？」
びっくりした、何それ。
何でそんな流れになるのよ。
ゆっくりとジョングクの方を向くと
私の顎を掬い上げる彼の指先。
黒くて透き通るような瞳からは
到底逃げられる気がしなくて。
心も身体も視線一つで囚われる。
さっきも感じた妙な感覚がまた込み上げる
「俺、Aなら好きになれる気がする」
「……冗談やめてよ。」
「本気なんだけど。」
頭から爪先まで痺れるような感じ。
それが危険だってことくらい、わかってる。
「つまんないならさ、俺と恋愛しようよ」
「………、」
「もう既に俺に少し惚れてるでしょ」
「自意識過剰なんだけど。」
「俺から逃げないくせに。」
逃げないんじゃなくて、逃げられないの。
視線で睨むように強く訴えたら
黒ずくめのウサギ顔の男が満足そうに、微笑んだ。
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作成日時：2024年3月17日 13時
