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「あ、ねぇ、ちょっといい?」




廊下を歩いている私に声を掛けたのは


美術部の顧問のナウン先生だった。





「ジョングクくんのクラスの子だよね。伝言お願いしたいんだけど。中々部活、来ないから……」

「あぁ……」




私から伝えて大丈夫かな。


一瞬そう思ったけど、先生からの伝言だし。


私の意思じゃないから、まぁいいか。


その結論に至って先生の話を聞くことにした












「ジョン……チョンくん」

「なに?」




危ない、ジョングクって言いかけた。


それに気づいてるジョングクは


うさぎみたいな愛らしい顔でクスクス笑ってる。


……仕方ないでしょ、この呼び方に慣れちゃったんだから。



多分、店で今の揶揄われそう。




「先生からの伝言なんだけど」

「うん」

「……コンクール近いけどどうするのかって。」

「………」

「作品を描いてるなら進み具合とか教えてって」





そこまで言った途端にジョングクが席を立つ。


目を伏せて私の方を見ないで。





「………何でそんな事、キムさんに言われんの?」

「……伝言頼まれたからだけど」

「あっそ、ご苦労様。」

「チョンくん、」

「なに?」




初めてかもしれない。


ジョングクにこんな冷めた目を向けられたの。


声も表情も態度も全部いつものジョングクなのに


黒くて大きい瞳は、異様に鋭くて冷め切っている。




その目を向けられたことも


その目に私が映らないことも




……怖くて悲しいのは何故?





「まだ用、あんの?」

「………ないよ。」

「そう」




それだけ言い残して彼は教室を出て行った。


どこに行くの?何でそんな表情するの。


それすら聞けなかった。

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作成日時:2024年3月17日 13時

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