希望の苗を植えましょう (ページ6)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:1,971 hit

4 ページ6

レオ「…ぅう。っあ」

部屋に戻り寝ようと動けば痛む体。体を投げ出すどころか、呼吸さえも怪しいのではないか…。
対策を練ろうとしていたその時、通路の向こうから足音が響いてきた。どうやらレオのところに向かっていたらしく、足音は格子の前で止まった。

「起きているか…」

月明かりで照らされたのは案内人の男。

レオ「…こんなんで寝れるかよ」

「そうだな…すまない。体を診せてくれ」

片手に救急バッグを持ち近づいてくる。だがそれに伴いレオは距離を開ける。

レオ「余計なお世話だ。俺たちにしたらどうってことはない。近づくな」

それはまるで手負いの狼が敵を見て警戒しているようだった。

「獣子族の血を引いていても辛いものは辛い。諦めろっ！！」

レオ「ぅあ！！」

怪我人で子供なレオが男に勝てるわけもなく、あっけなく押し倒される。

レオ「いってぇ！！」

「騒ぐな。主人にバレたら厄介なんだ」

レオの行動を不能にした後、服を退かし手当を始める。

レオ「くせぇ」

「我慢しろ」

アルコールの匂いが鼻についたのか、顔をこれでもかと皺寄せる。手当が終わり包帯が巻き終わったあと、レオはすぐ様フードを被った。

「そんなに警戒するなよ」

レオ「…喋っているだけでも結構だぞ」

「あそ」

男はそのまま出て行く様子はない。殺気を出しながらも、男を隅から隅まで観察する。

レオ(あれっ、こいつ…)

何かに気がついたレオの反応を見て、やっとかと男は呆れる。それが伝わったのかレオはぶすくれた。

「やっと気がついたか…。まぁ隠してたからしょうがないけど」

レオ「おかしいとは思ってた。だってあんたには俺たち以外の種族にあるはずの耳がない」

「ご明察」

そういうと男は頭を振り出し、毛をそばだてる。すると頭の、耳より上の方に獣特有の大きな耳が現れた。

「隠すの結構大変なんだからな」

毛の色だけで気付けなかったのか…否レオは枯子以外の種族をあまり知らない。よって彼の、月明かりを浴びてキラキラと光るシルバーの髪の意味を、知らなかった。

レオ「尻尾は？」

「…切られたよ。村を出るずっと前に…な」

レオ「なんか…ごめん」

「餓鬼が気を使うな笑笑」

レオ「うっせぇ」

最初の頃は嘘かのように、彼らは一頻り語り合い、笑いあったのだった。

空には大きな満月が高く高く昇っていた。