壱章 ページ3
人々が溢れ活気のある街並み。そんな風景を見れば、皆は口々に「いい町だ」というだろう。だが、道を一本外れればそこはもう「いい町」などとは言えなくなる。家もなく、ボロ布に身を包み、人目を避け毎日を凌ぐ者で、溢れていた。
そして彼もそのまた1人である。
「おい!っざっけんな!待てクソガキ!!」
近くの店から食料を盗み取り、自慢の足で相手を翻弄する。
フードを深く被り、食料の入った袋を小脇に抱え通路の奥へ奥へと進んでいく。
どれほど走っていたのか…。
少年がふと立ち止まる。後ろを向いてももう店主は追いかけてこない。すぐに抱え直して歩き出した。
「レオおにいちゃん!おかえりなさい!!」
「みんな!レオが来たよ!!」
「おなか…すいた」
レオ「慌てんな。飯なら沢山持ってきたから…」
「「はーい」」
暫くして聞こえてきたのは数人の子供の声と、大人の姿。
大人といってもまだ16歳ぐらいだが…。
レオと呼ばれた少年は見た目からしても、13歳ぐらいに見える。
袋の中身を順々に渡し、他の者達に駆け寄る。
「レオ、いつもすまねぇな。お前のその能力に頼っちまって」
レオ「気にすんな。できる奴がするのは当然だ」
「ありがとな」
他の大人でも行けなくはないが、皆がレオに頼る理由…それはレオの能力にあった。
能力…といっても、それは身体能力が他のものに比べ高いだけ。それはレオの血筋のおかげでもある。
レオは獣子族と枯子族の混種で、他のものよりも身体能力が高かった。その為、食料調達などといった危険なことを任されることが多かった。
「最近、混種に関してまた厳しくなったそうだ気をつけろ」
レオ「わかった」
かくゆう目の前の彼も、また違う種族との混種だった。
混種は見た目が枯子をベースに他の種族の特徴が入っている為、見分けやすくなっている。
レオは、見るものを怯えさせそうな大きな赤い目と、耳、硬く長めの髪の毛が特徴だ。
目の前の彼は目が見えない代わりに、精霊が周りを飛んでいる。
レオ「それじゃあまたな」
役目を果たし、帰路につくレオ。住処は別にあるが、態々皆に食料を送り届けにきている。
「レオにぃ!ありがとう!!」
「おにいちゃんまたね!!」
「今度は遊んでくれよ!!」
背後からかけられる声に手を挙げて答え、歩いた。
フードを被り直し、進んでいく。暫くして背後に気配を感じたが、どうやら遅かった模様。気がつくと意識は暗転していった…。
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作者名:あげのり | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/raimu2/
作成日時:2019年5月16日 15時