__ chocolate.38 ページ38
.
きっと外は寒いだろうからなんて
それなりに暖かい格好に着替えて外に出る。
雪は降ってはいないと言うものの、
夜に吹く北風は想像以上に身に染みてきて
剥き出しになっている頬は異常なほど冷たかった。
平野さんも寒い中待っているだろうから
出来るだけ早く行ってあげよう。
そんな言い訳の御託を並べてみるけれど
本心では自分が平野さんに会いたいだけであって
急いでいる理由なんて後付だった。
平野さんが待っている場所と言ったら
あの場所しかないだろうと、バーの近くにある
ビルの影元へと足を急がせる。
そこに近づいてみれば、人影がチラついて
その独特な容姿で彼だと分かった。
「 平野さん 」
マフラーを顎の辺りまで下げてから呼んでみれば
すぐにこちらを振り向いてくれる。
彼の口から吐き出された空気が
寒さに負けて白く変わっていくのを追えば
慌てるように私の傍に来た平野さん。
『 Aっ 』
今にも冬空に消えてしまいそうなほど儚い声で
そっと私の腕を引いて抱き寄せてくる彼に
今までの寒さが一気に吹っ飛んだ。
今度は暑くなるほどに体温が急上昇して
痛いくらいに大動脈をうちつけていく血液が
沸騰するんじゃないかと思うくらい沸き立った。
「 ぇ、ひ、平野さん…? 」
ぎゅっと私の体を抱き込む彼のたくましい腕に
つい動揺してしまって、脱げ出そうと試みるけれど
到底彼の力に敵う訳もなく。
反抗すれば逆に、さらに力が込められてしまった。
『 …あと十秒でいいから 』
この体勢のせいで近くなっていた彼の唇が
そう音を鳴らすと、すぐ傍にあった私の耳に響いて
どれほど近い距離なのかを知らせる。
微かに耳たぶにかかる平野さんの吐息に
何も考えられなくなってしまった。
.
__ chocolate.39→←__ chocolate.37
1598人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくらんぼ&チェリー@サブ(プロフ) - あぐた。さん» わぁぁぁぁぁ!ありがとうございます!! (2020年2月21日 21時) (レス) id: 8fd736f5ec (このIDを非表示/違反報告)
あぐた。(プロフ) - さくらんぼ&チェリー@サブさん» コメント、ありがとうございます。ベテランだなんて…まだ投稿を始めて数ヶ月も経っていない未熟者です。また作品読ませて頂きますね!(^^) (2020年2月21日 1時) (レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ&チェリー@サブ(プロフ) - いんこです!hit数がスゴい……ベテランさんですね! (2020年2月21日 1時) (レス) id: 8fd736f5ec (このIDを非表示/違反報告)
あぐた。(プロフ) - ゆかさん» コメントありがとうございます。ただいま下書きをしております。公開予定は今週末を予定しておりますので、もう暫くお待ち頂ければ幸いです。 (2020年2月18日 10時) (レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
ゆか(プロフ) - いつも読ませて頂いています!是非新作も読ませて頂きたいのでパスワード教えて頂きたいですか (2020年2月18日 10時) (レス) id: ad4f41f45e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あぐた。 | 作成日時:2020年1月25日 21時