桜の花弁12枚 ページ13
私を包んでいた浮遊感が消え、普段感覚がないはずの所に空気の冷たさが伝わる。
辺りが檜の香りと
あの時感じた、新しい絹織物のような深い、落ち着いた匂いで満ちている。
緊張感を抑え、ゆっくりと目を開いた。
と同時に、勝手に口が動く。
貴「私は、碓氷A。300年ほど前でしょうか...鍛刀されたのは。感情が少し抜けていますが、精一杯働かせて頂きます。」
考えてもいないのに、こんな自己紹介文のようなものが.....
ふわっ
あれ、この匂い...
匂いがする方に目を向けると、
一本の槍を持った逞しい武人が、私の頬に触れていた。
....見たことある。
その逞しい刀身。
彼だ。
「もしかして........蜻蛉切?」
蜻「ッッ!!!ああ、覚えていたか....!
ずっと、会いたかったッ...!」
知らない間にこんなに逞しい武人に....
彼は私が潰れて仕舞うほどにきつく抱擁した。
貴「蜻蛉切、苦しいです...
あの日以来ですね。」
久しぶりに会ったものだから、ついつい話し込んでしまった。
結「あのー、僕たち空気ですよ?」
蜻「ああ、すみません主。A、我らの主だ。」
主...恐らく私を人の形にして下さった方だろう。
貴「これから、どうぞ宜しくお願い致します。」
結「いえいえ、こちらこそ。それよりも、Aさんは刀剣女士なのですか?」
刀剣...女士?ということは、彼は刀剣男士...?
貴「はい、恐らく。顔も体つきも女なので。」
自分でも彼と私の体つきの違いくらいわかる。
結「その件なのですが、この本丸は刀派ごとに部屋をわけているのです。さすがに男達と同じ部屋など嫌でしょう?余りですが、布団も部屋もございます。一人部屋に案内してよろしいですか?」
貴「では、お言葉に甘えさせて頂きます。」
結「では、こんのすけ!お部屋に案内を。」
こ「承知しました!さあ、こちらへ!」
どこからか狐...?が現れ、私を部屋に案内してくれた。
こ「こちらにございます!何かご不便がありましたら、私をお呼びください!」
貴「あ、ありがとうございます。」
私がそう言うと、狐はポンッと音をたてて消えた。
改めて、部屋を見渡してみる。
余り物とは思えないほど豪華な布団。
思わず布団に倒れ込み、そのまま意識を手放した。
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ラヴァ(プロフ) - 猫マシュマロさん» ありがとうございます!更新、頑張ります!! (2020年9月10日 20時) (レス) id: 872177c79b (このIDを非表示/違反報告)
猫マシュマロ(プロフ) - 面白いです!更新、頑張ってください!応援してます! (2020年9月10日 18時) (レス) id: 374dad9b55 (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん - ヤベーベ。早く続きが気になる。興味持ったわ。 (2019年12月2日 0時) (レス) id: d84ad9f86b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラヴァ | 作成日時:2019年8月30日 6時