22 止められなかったから ページ23
「Aは俺の大切な友人だ。言いたいことがあるなら今後は机に書くんじゃなく俺を通せ。以上だ。」
そう言って席に着いた氷鷹くんにワンテンポ遅れてクラスがざわめき出す。
HRが終わり先生が教室を出ていった瞬間、全員に話があると呼び止め彼が発したのはその二言だけだった。
席が離れていたのがまだ救いだった。
遊木くんは前の席に座る彼を見て目と口を開けたり閉じたりして、明星くんは少しだけ氷鷹くんを見た後廊下の窓をぼんやりと覗いた。
相も変わらず隣は空席。
教室の居心地はやっぱり良いとは言えなくて、今も魔法みたいなあの部屋に逃げ込みたいと思った。
「委員長さ、なんでそんな奴のこと庇うの？」
声を発したのはクラスでも問題行動の多い人だった。
座席は私の斜め前だけれど、きちんと話した事はない。ただ着崩しが酷く、授業もろくに聞いていない人ということは知っている。見た目から氷鷹くんとは正反対なのがわかるし、実際に彼らはよく揉めていた。
「…てかさ、あの時の俺の意見に誰も反論しなかったじゃん」
その一言に氷鷹くんが顔を顰め、彼の目の前に立つ。
あの時…というと、私が倒れた時のことだろうか。私が学校に戻ってきた時にはもうギスギスしていたし、その時のことはよく知らない。
何の事かと氷鷹くんを見ても、彼とは目が合わなくて。
「誰も否定しなかったじゃん、なぁ？」
煽るような彼の言葉に、周りの人も曖昧な肯定を口にし始めた。表情こそわからないけれど、氷鷹くんは「やめろ」と小さく溢す。
「委員長だって思ってたんじゃないの？…だっていつも冷たくあしらってたじゃん」
違う。
そう思っていても、その言葉は喉につっかえて出てこない。
そんな私に気付いているのかいないのか、もう一度氷鷹くんが「やめろ」と呟く。今度は少し威圧するように。
怖いもの見たさというべきか、苦い言葉は聞きたくないはずなのに、私はその場を逃げることができずにいた。
それで後悔するなんて、知っているのに。
「 "こんな時期に練習時間を無駄にさせんなよ"
…って、あの時委員長も何も言わなかったよなぁ」
その瞬間、パシンと何かを叩くような音がした。
何となくわかっていたのに。
わかっていたのに、彼を止めることができなかった。
あぁ、どうして私の事で。
そんな罪悪感から、咄嗟に閉じた目は中々開ける気になれなかった。
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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年3月29日 19時) (
レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです！めちゃくちゃ楽しませていただきました！！ (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり｡さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり｡ - 完結おめでとうございます！雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました（笑）これからもファイトです！ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：繕 | 作成日時：2019年7月31日 11時
