16 引っ張るから ページ17
「取りあえずご飯食べましょ!」
鳴上くんが声を上げてくれたことで、みんな一斉に机を動かし始める。こっちはみんなで一緒に食べるんだね、なんて鳴上くんに声をかけたら「あら、A組はしないの?」と意外そうな顔をされた。
「A組は食堂とか別の場所で食べる人も多かったし…Tricksterのみんなは固まって食べるけど、私、少し前からは食堂で一人で食べてたから…」
「…そう」
彼は少し眉を下げ、そしてすぐ「それじゃ、今日からは毎日みんなで食べましょうねェ!」と私の背を押して真ん中の席に座らせた。…なんだか、小学校の給食の時間みたいだ。
それぞれがお弁当やコンビニの袋を取り出して、いただきますと全員で手を合わせ、一斉に食べ始める。私も遅れてお箸を持って、今朝焼いた卵焼きを口に運んだけれど、頭の中は先程の夏目くんのことばかりで。
朝は教室には行かないって言ってたけど、結局行ったんだなぁとか、わざわざ私の荷物を持ってきてくれたんだな、とか。
私の為にやってくれたのかな。それとも、ただ隣の席にいたから?
( 少しでも、仲良くなれたのかな。)
そんなことをぼんやりと考えていれば、不意に凛月くんに「なにニヤけてんの?」って顔を覗きこまれて、知らぬ間に緩んでいたらしい口元に力を入れ直す。
「…ンで、どうすんだよ?」
突如、大神くんがスマホ片手にちらりと私を見た。なにをだろうかと黙っていると、凛月くんが「Aはこれからどうしたいの」と付け加えてくれる。
「私は、A組のみんなと、ちゃんと仲良くなりたい…けど…」
多分、本当にみんなから嫌われちゃったね。
少しの沈黙。先程の夏目くんの話のせいか、全員言葉を失っていた。そんな空気を破ったのは伏見くんで、姿勢を正してから「ちゃんと、というと?」と私の目をじっと見る。
「…みんなはアイドルで、私はプロデューサーで。プロデューサーなんだから、完璧にプロデュースできることが当たり前で…できなければ嫌な思いをさせちゃうから…その…」
だから、えっと、…なんて言えば良いんだろう、
言葉を詰まらせた時、バンと机を叩きながら大神くんが急に立ち上がった。その勢いで彼の椅子は後ろに倒れ、「んあぁビックリさせんといてよぉ!」とみかくんが可愛らしく怒る。
「オイA、今から軽音部室行くぞ」
あとオカマ野郎も来い!!
そう言い放ったかと思えば私の手を取り走り出す。
( 体力には自信ないんだけど… )
がっしりと手を掴まれては逃げる事もできなくて。
415人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました!! (2022年3月29日 19時) (レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです!めちゃくちゃ楽しませていただきました!! (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり。さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり。 - 完結おめでとうございます!雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました(笑)これからもファイトです! (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:繕 | 作成日時:2019年7月31日 11時