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25、救出 ページ26

猫、と呟いた私を、上杉と若武が見る。

「猫ってなんだよ」

若武が半ばキレた様子で聞いてくる。


「金沢誠が、電話した時。猫の声がするって言ってたじゃん」

「それがなんだよ」


若武に言われ、私が口を開こうとした時、1階のベランダの戸が開いた。

庭の水銀燈が光、1人の女の人の姿が浮かび上がる。

私たちは、咄嗟に光の届かない木に隠れた。


「金沢のヤツ、電話を切られたな」

「今まで持たせりゃ、偉いよ」


金沢誠の姉貴さんは、牛乳パックを持ちながら、ベランダの脇にあったプラスチックの皿を持ち上げた。


そして、私たちの前を通り過ぎると、立ち木の間にある物置の戸口に立ち止まる。

そこにお皿を並べて置き、牛乳をつぐ。

そして、ポケットから鍵を出して戸を開けた。


「ミルクよ、出ておいで」

首に首輪がはめられ、そこから鎖が小屋の奥へと続いていた。

「すげえ……ネコ小屋だ」

若武が呆然として呟く。

その時、戸口に、人間の細い腕が見えた。


「やっぱり」

その赤ちゃんは、猫と同じようにミルクをなめ始める。

猫に引っかかれたような傷もたくさんついている。

「食事が終わったら、散歩よ」

金沢誠の姉貴さんがそう言うのと、上杉が私達を止めるのが同時だった。

「花珠待てっ!若武、お前も!」

私が、姉貴さんをおさえ、若武が赤ちゃんを抱き上げる。

すると、赤ちゃんは火のついたように泣きだした。

「黒木、警察に連絡っ!」

姉貴さんは私を振り払い、咄嗟に物置の壁に立てかけてあったスコップを手に握る。

「立花、家に入って玄関の鍵を開けてにげろ!上杉、赤ちゃんをたのむ!」

若武が赤ちゃんを差し出し、上杉が駆け寄って抱き取るのと、姉貴さんがスコップを振り下ろすのが同時だった。

「危ないなぁ」

そう言いながら、姉貴さんの腕を蹴りあげる。

「花珠、サンクス」

よろけた姉貴さんは、再びスコップを持ち上げる。

その脇をくぐって、上杉が立ち上がる。

「立花、戸、あけろっ!」

彩ちゃんがベランダに駆け上がっていくと、上杉は赤ちゃんを預け戻ってきた。


姉貴さんは、何度もスコップを振り落としてくる。


「上杉、そっちおさえて!」

私と上杉とで、姉貴さんにしがみつくが、強引にそれを振り払う。

「若武危ない!」

若武は、叩き下ろされるスコップを避け、直後に右足を蹴りあげてお姉さんの左肩にたたきつけた。

スコップは、音を立て、若武の左足の甲に突き刺さった。

26、若武の将来?→←24、侵入罪に問われるね



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柚姫 - KZのほかのシリーズも作ってください!応援してます! (2021年6月14日 16時) (レス) id: 76382fa356 (このIDを非表示/違反報告)
つばくらめ(プロフ) - 日向飛沫さん» 読んで下さり、ありがとうございます!更新頻度をあげれるように頑張ります (2019年7月29日 15時) (レス) id: 771d970bd8 (このIDを非表示/違反報告)
日向飛沫(プロフ) - 何時も読ませて頂いています。更新頑張ってください! (2019年7月29日 14時) (レス) id: 5cd376c69b (このIDを非表示/違反報告)
つばくらめ(プロフ) - アオイさん» フリガナ振ってなくてすいません![はなみ]と読みます!コメントありがとうございます!更新頑張ります!! (2019年7月6日 14時) (レス) id: 771d970bd8 (このIDを非表示/違反報告)
アオイ(プロフ) - 夢主ちゃんの名字の読み方教えてください!更新頑張ってください!! (2019年7月6日 13時) (レス) id: fd0d6f525d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:つばくらめ | 作成日時:2019年5月8日 22時

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