22、電話 ページ23
「ね、こうなるってことがわかってた?」
彩ちゃんが、黒木に聞く。
「図書室からこっそり本を持ち出していても、それをきちんと返すタイプなんだぜ。無断持ち出しだから捨てちまっても分からないはずなのにさ。つまり、基本的に真面目なんだ。真面目なやつは、ストレートだ。心が曲がっていない。そういう人間は、よく考えさせてやりさえすれば、真っ当な結論を出すはずなんだ」
さすが、対人関係のエキスパート。
考え方がね、違う。
「じゃあ、電話をかけてお姉さんの様子を探ってくれないか。たまには遊びに行きたいとか何とか言ってさ」
若武の要求に、金沢誠は頷いた。
「もしそこに子供がいれば声、が聞こえる可能性もある。できるだけ時間を引き延ばして、よく注意して聞いてみてくれ」
黒木のアドバイスを聞き、金沢誠は受話器を持ち、ボタンを押した。
緊張してんだろうな。
「あ、姉さん?僕」
金沢誠の声は、震えていた。
「ん……別に用って程じゃないんだけど……何となく顔を見たくて……」
汗をかくぐらい、金沢誠は、頑張っていた。
やっぱり、きついものがあるよなぁ。
「たまには遊びに行ってもいい?……え、ダメ?……なんで?!」
若武は、いいぞというように拳を握りしめ、揺さぶりながら囁いた。
「頑張れ!」
……金沢誠の邪魔になってないといいけど。
その後も、苦労しながらなんとか話を引き延ばした。
だけど、金沢誠は口を開こうとして、こちらを振り返った。
「切られた…」
まじかぁ。
「なにか、つかめた?」
上杉が聞くと、金沢誠は、首を横に振った。
「てんでダメ。何も話そうとしない」
強行突破しちゃって、いいんじゃない?もう。
「ねね、子供の声は聞こえた?」
「ううん、全然」
……おかしいな。それは。
「でもさ、変なんだ。子供の代わりに、」
「代わりに?」
金沢誠が首を傾げる。
「ねこの声がした」
ねこを飼っているんじゃなくて?
「それも、たくさんのねこが鳴いてる感じで、騒がしかった」
若武は、気落ちした様子で呟いた。
「一人暮らしで寂しかったらねこぐらい飼うだろ。変じゃないよ」
「変だよ」
押し返すように、金沢誠は言うと、若武に向き直る。
「うちの姉貴って、ねこが嫌いなんだ。昔、ねこにひっかかれた傷が膿んで、手術して、今も傷跡があるくらいだから。普通じゃ絶対、飼う気になったりしないはずだよ。しかもたくさんなんて……」
お姉さんの家、調べようじゃん?
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柚姫 - KZのほかのシリーズも作ってください!応援してます! (2021年6月14日 16時) (レス) id: 76382fa356 (このIDを非表示/違反報告)
つばくらめ(プロフ) - 日向飛沫さん» 読んで下さり、ありがとうございます!更新頻度をあげれるように頑張ります (2019年7月29日 15時) (レス) id: 771d970bd8 (このIDを非表示/違反報告)
日向飛沫(プロフ) - 何時も読ませて頂いています。更新頑張ってください! (2019年7月29日 14時) (レス) id: 5cd376c69b (このIDを非表示/違反報告)
つばくらめ(プロフ) - アオイさん» フリガナ振ってなくてすいません![はなみ]と読みます!コメントありがとうございます!更新頑張ります!! (2019年7月6日 14時) (レス) id: 771d970bd8 (このIDを非表示/違反報告)
アオイ(プロフ) - 夢主ちゃんの名字の読み方教えてください!更新頑張ってください!! (2019年7月6日 13時) (レス) id: fd0d6f525d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つばくらめ | 作成日時:2019年5月8日 22時