KZと私と＜消えた自転車は知っている＞ (ページ9)

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9、サッカーボールのキーホルダーページ9

特別クラスにみんなが揃うと、若武は黒板に
『マウンテンバイク消え失せ事件』と書いた。

いや、消え失せってなんだよ…。ネーミングセンスが無さすぎだ。

と、ここで彩ちゃんが咳払いをする。そりゃ、国語のエキスパートとしては、見逃せないよね。

「そこは、消失事件か、あるいは盗難事件とした方がいいわ」

若武はすぐに書き直した。単純だね。

それにしても、彩ちゃんは言葉遣いが丁寧で、女の子らしい。私の口の悪さが、浮き彫りになるわ。

「では、諸君」

……では、諸君。みんなの顔が。

「これについて考えて見ようではないか」

そう言い、若武は黒板に犯行時間、場所、被害者……など書き上げて行く。
その間も、彩ちゃんにつっこまれてたけどね。
彩ちゃんも若武の扱いに、慣れてきたとこかな。

一通り書き終えたところで、小塚が口を開いた。

「特徴は、それだけ？ほかには？たとえば、何かがついていたとかさ」

そういえば、若武…………。

上杉も意味ありげな笑みをふくんで、若武を見る。

「あるだろ、若武言えよ」

若武は口をつぐんでいたけど、やがて諦めたように言った。

「ハンドルに、サッカーボールのキーホルダーがついていた」

上杉がその後に続ける。

「同じクラスの女からもらったやつだ」
「バレンタインに、チョコレートと一緒にね」

私も便乗する。
黒木がピュッと高い口笛を吹いた。

「やるじゃん、若武。そいで、その子とどうなってるの？」

若武は、赤くなって黒木を睨んだ。

「若武赤くなってる～。あれ、照れてるの？」

私は茶化すように言う。

「黙れよ。捜査に関係ないだろ」
「関係あるね。その女が絡んでるかもしれない」

上杉がキッパリ言う。

「あの子は怪力じゃないぞ！」

私たちは顔を見合わせる。

「おーっ、あの子だって！」
「怪しいじゃん若武」
「やるねぇ、若武」

みんなで若武を小突いたり、いじったりしていた。

「ほかに自転車の特徴は？」

彩ちゃんの声が響いた。少し、キツめの声だった気がする。

そんな声を出す彩ちゃんに、私はびっくりした。

「早く探さなきゃならないでしょ。ほかの特徴は？」
黒木や、疑わしそうな目を向けてあげないでおくれ。

「ほかにはない。これらの条件から、犯人のメボシをつけてみよう」

私たちは一斉に黒板を見上げる。