KZと私と＜消えた自転車は知っている＞ (ページ29)

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28、事件解決ページ29

「じゃ、どうするんだ？このまま5月1日の犯罪を見逃すのか」

小塚が困ったように言った。

瞬間、若武が、パチンと指を鳴らして言った。

「わかった！5月1日に俺たちで待ち伏せして、犯人が逃げてきたところをつかまえるんだ。そうしてそれを警察まで連れていく。カッコイイぞっ！」

彩ちゃんが、ため息をついた。

「若武、私たちが言ってること分かってる？」

私も呆れちゃったんだけど。

「危険すぎる」

上杉もキッパリと言った。

「犯人は、凶器を持っているに決まっているし、なんといっても強盗の直後だ。相当、興奮してるはずだ。それこそ、やられちまう」

若武は、ふくれた。

「ほかに、どんな方法があるっていうんだよ。こんなすごい凶悪犯を、野放しにしとくつもりか」

「方法は、ひとつだけさ」

そう言って上杉は、わたしと黒木を見た。

「つまり、このレコーダーと犯人の住所を書いたメモとを封筒に入れて、差出人の名前を書かずに警察に届ける」

若武の顔から、輝きが消えた。

「そうすれば、警察は極秘で調査を進めるはずだ。5月1日までにもっと確実な証拠を掴めば、犯人を逮捕するだろうし、それが無理でも当日は、きっとセブンイレブンをガードする。つまり犯罪は防げるってわけさ。そうだろ、黒木、花珠」

自信たっぷりの上杉に、私と黒木はうなずく。

「上杉教授のおっしゃる通りだ。これしか、方法はないね」

小塚と彩ちゃんも、うなずいた。

そのとき、若武がおずおずと提案した。

「せめて、俺たちがやったってことだけでも、警察に知らせることは出来ないかな。盗聴については言わずにさ。だって、せっかくここまで犯人を追いつめたんだぜ。全部俺たちがやったんだぜ。それなのに……」

「仕方ないね」

私のあとに、黒木と上杉が前後して言った。

「できないね。あきらめろ」

「レコーダーは、今夜ダビングして、片方を明日の朝、ポストに入れる」

若武は、今にも泣きだしそうな顔で言った。

「それじゃ、骨折り損のくたびれもうけってことかよ。誰にもわかってもらえず、チャリも戻ってこず、表彰もされないなんて…そんなの、ありかよぉ」

黒木がニヤッと笑って言った。

「世の中には、そういうこともあるさ」

「そう」

上杉が、つっこむ。

「たまには、ひっそりと善行を施すのもいいことだ。お前は、いつも自分のした事以上に宣伝しすぎるからな」

若武を見てみんなで笑い転げた。

……今回は、一件落着かな。