17、犯人像 ページ18
「じゃあさ、犯人の家が新田町だっていうのは、どこから分かるんだ?」
若武が言った。若武、気持ちがのって来てるね。目の輝きというか、熱のこもり方というか。
上杉は、ニヤッと笑った。
…なんだろ、その顔似合うんだよな、アイツ。
「土さ。ほら、タイヤのゴムの間にドロが入ってるだろ」
そう言われたので、そっちを見た。
「秀明の西側からここまでの道を考えてみると、繁華街から市街地にかけてはずっと舗装だ。それを過ぎて、グラウンドのほうにおりてくると、普通の土の道になる。ただし土は、こんなふうにはこびりつかない。これは、ドロだ。そこでもう一度、シャリの小塚博士の出番なんだ。小塚、バトンタッチ」
小塚博士、って似合ってるよね。めっちゃ。
小塚はコホンと咳払いをし、口を開いた。
……それっぽいなぁ、なんか。
「土には、いろいろな種類があるんだ。とくにこの市外の地質は、秀明グラウンドのある北部側と、この野村グラウンドのある南部側とでは、かなり変わっていて、おもしろいよ。すうじつまえに、雨が降っただろ。それでKZは、前の練習日に秀明グラウンドを使えなかったんだよね。ぬかってさ」
地質に面白さを感じたことは、残念だけどないなぁ。
彩ちゃんと若武が、頷いた。
……あ!そういう事か!
初めて彩ちゃんに会った時に、やたらと若武を睨んでたなぁと思ったら、初対面じゃなかったのね!
KZが、彩ちゃんの学校に行ってたのかぁ。
え、もうなんか、スッキリした。なんでだろ。
「自分のガレージの中だ」
黒木が、静かに言った。
「当たり」
あら、いつの間にか話が進んどる。
やっべーなんも聞いてなかった。
上杉が答え、メガネを押し上げた。
…なんか、その仕草も似合ってんな、アイツ。
「つまり犯人は、この北部地域のどこかに住んでいるんだ。ところが北部地域は、ガソリンスタンドや郊外レストラン、グラウンドや畑が多くて、住宅地は少ない。ただひとつあるのは」
若武が、すかさず叫ぶ。
「新田町のビバリーヒルズだ!」
おお、あそこか。なかなかなお値段だったけど、直ぐに売れたと言う。
お母さんが、買おうかなぁなんて言ってたのを、止めた記憶があるわ。
「自転車をバンパーの下に巻き込んだまま走ったら、当然、車も壊れるに決まってる。それを承知で走らざるをえなかったんだから、相当焦っていた。つまり犯人は、新田町に住んでいる壊れた緑色の外車を持つ人間で、その日はすごく忙しかったヤツだ」
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作者名:つばくらめ | 作成日時:2019年4月22日 20時