審神者は鬼を切れるでしょうか【刀剣乱舞×鬼滅の刃】 (ページ36)

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結局、現時点では鬼殺隊と友好的な関係を結んでおこうという結論に纏まった。何より鬼の世界へ足を踏み入れるにあたって、鬼殺隊以上に心強い組織はなかった。(信頼出来るという前提だが)その上で敵対されるようであればこちらも抵抗する───予定だ。

「それで同行者は」

「まあ大方信頼のおける初期刀の君と僕かな」

「俺は、」

「却下だへし切。貴様は先の会議での発言を恥じた上で鞘の錆でも取っていろ」

凡そ常人が出せない様な憎悪の目線を向け、歯噛みした長谷部が二振りに背を向ける

「長谷部くん」

そのまま立ち去ろうとした背に、燭台切が穏やかな目線を向ける

「当たり前は、大勢が信じ続けているからそうなるんだよ
そしていつしか"当たり前"は在る事に気が付かなくなる審神者や僕らの存在がそうであるように」

「…何が、言いたい」

「……当たり前の中で誰かが立ち止まると、それは忽ち疑問になる。破綻する、矛盾する、みんなが疑い始める
自分だけが疑問を持つ当たり前なんて、おかしいと思わないかい？」

「俺達刀の中にも、意識していないだけで潜在的な当たり前は無数に存在する
誰も疑う事を許されなかった物が、だ」

黙って話を聞いていた山姥切が紡ぐ

「本丸にいる時は誰も気に留めなかった、本当に当たり前だったからね…もしくは気付きたくても気付けられなかったのかもしれないけど」

「……ならば」

怒りに震えた声で刀の柄に手を添えた長谷部が怒鳴る

「主がこの世界で審神者に縛られたままでいるのも！"当たり前"だと言うのか！言ってみろ燭台切光忠ッ！」

「それがルールだったからだよ」

一転して冷ややかな目で告げる

「当たり前なんて感情的なものじゃない
模範であり規則だった、俺たちの中に埋め込まれていた"ただの"既成事実」

「けれどこの世界には来てから、その"ただの既成事実"に僕たちが疑いを持ち始める事が出来るようになった
"当たり前"になってしまったんだよ」

「お前だけじゃない、長谷部
恐らく他の刀も同じ疑問に気付き始めるだろう」

呆然としている長谷部に淡々と告げる目は、同情や悲しみ───同時に混乱を含んでいた

「それは主もだよ……多分だけどね
この世界に来てからずっと様子がおかしいもの
今1番混乱してるのは誰だと思うの？長谷部くん」

「今は焦る時じゃない
慎重に事を進めなければ、壊れるのは主だ」