･ ページ40
「おい、嘘やろ。これどういうことや。」
「え……？」
私たちが本部に着くと、そこにはもうボロボロの結界と互いの意識を奪い合う妖の姿、それを消し続ける辰哉くんたちの姿があった。
「ごめんな、Aちゃん。お花見はちょっと後になりそうや。今から俺がAちゃんのこと隠して見えんくするから、安全な場所まで逃げれるか。」
「みんなは、大丈夫なの？」
「当たり前やろ、ここの精鋭たちや。すぐに戻る。」
「信じるからね。」
「おう、任せとき。ほな、行ってくるわ。」
康二くんは私を隠すと、手を振って辰哉くんたちの元へと向かい、結界を作り始めていた。
一体何があったのだろう。
あんなに大量な妖はどこから来たのだろう。
なぜ康二くんの結界は壊れたのだろう。
疑問しかないし、恐怖心がどんどん募っていく。
「もうやだな…本当になんで視えるようになっちゃったんだろ……」
辰哉くんに気にしすぎるなって言われたけど、ここまで来ても何も出来ない自分が嫌になる。
「ラウ、無理しちゃダメだって…！」
「大丈夫だよ。訓練だって沢山してきたし、阿部ちゃんが色んなこと教えてくれたでしょ？」
「でも……」
「俺、もっと強くならなきゃ。みんなに守られてばっかりじゃ俺が…俺が納得いかないから。」
「だから、行ってくる。」
「っラウ！」
あれはきっと、阿部さんの部署で働いてる人だ。
走って応戦しに行っている。
確か、ラウールさん。この前聞いた。
「ラウ……俺もう、見たくないんだよ…目の前で救えないなんて、視たくない……」
あんなに弱っている阿部さんを見たことがない。
「見たのに、視えたのに、遅かったんだ。」
もしかして……
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 608人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mariri | 作成日時：2023年3月18日 18時
