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「俺がAちゃんの立場だったら、なんで視えるようになったんだろうとか、なんで消せないんだろうとかずっと考えちゃうだろうし。」
「その中でも、きちんと向き合おうとしてるAちゃんはダメなやつなんかじゃないよ。今日ここに来てくれてるのだって俺らの仕事に興味を持って知ろうとしてくれてるからでしょ?」
阿部さんの言葉に思わず目が潤む。
「向き合っている時点で何も出来てないなんてことはないんだよ。」
一定のリズムで背中をさすってくれる。
「落ち着いた?じゃあふっかに頼まれたコーヒー買ってくるね。」
そう言って出ていく阿部さんの言葉は自分にも言い聞かせているように聞こえて。
なんとも言えない気持ちになる。
「阿部ちゃん、終わらせてきたよー」
「って、Aちゃんしかいないじゃん。」
「あ、辰哉くん。お疲れ様です…本当に……」
「なぁに?俺、まぁまぁ強いんですけど〜?」
「いや、そういう事じゃなくて!凄い数だったので…」
「ふはっ、A真に受けすぎ。冗談よ?」
「あっ、名前…」
そういえば、あれ以来ずっと呼び捨てで呼ばれていないことに気づく。
「ん?あぁ、2人きりの時だけにしようかなーって。」
「どうしてですか?」
「なんかその方が特別感出るでしょ?A?」
「そ、そうなんですね……?」
あぁ、もう本当に、
「なにがしたいんですか……」
誰にも聞こえないように呟いた。
「俺の独占欲よ。」
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作者名:mariri | 作成日時:2023年3月18日 18時