海の泡になって消えるから -第6章-

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「太輔…？」


『あ、そういえばこないだね、俺がギター弾いてたら偶然北山が屋上に来てさ』


「…」


『俺のギターに合わせて歌ったんだよ。
すっっごいテキトーな歌詞のやつ！あれ面白かったー。今度みんなにも聞かせたいなぁ』


「太輔、なんの話を」




『わた』







いつもとは違うトーンで呼ばれた名前にピクリと肩が跳ねる。

ゆっくりとした動きで黒い瞳が俺を捉え、なんでだかわからないけど一瞬息が詰まった。




なんで、こんなのおかしい。

なんで、俺…太輔のこと、怖い、なんて







『北山が戻って来てよかったよね』


「え…」


『俺さ、なんかあいつが歌ってるの聞いてたら、もうこのまま歌えなくってもいいかもって、思っちゃった』


「何、言って…」


『仕事ももういいや。
ずっとここで暮らそうよ、みんなで』


「太輔…っ」


『このままでいい。このままがいい。そしたらさ、』







“俺ら、ずっと一緒にいられるでしょう？”



そう言って、

太輔は綺麗に微笑んだ。






どくん、どくん、と静かに鼓動が速さを増す。



誰にも気付かれないようなスピードで、
静かに、でも確実に壊れていく音がした。






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