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「ねぇ、」
『んん?』
「宏光そんなの食べれるんだ?」
不意に感じた違和感をそのまま口にすると、その場の空気が一瞬だけピタリと止まった気がした。
『へ?ほんなのって?』
もぐもぐと口を動かしながら答える宏光の手元にはオレが好んでよく食べてるチョコレートのお菓子。てゆーかたぶんオレが買ってきたやつ。
海外製のそれは中にクッキー生地とたっぷりのマシュマロが挟んであって、オレは好きだけどみんなに言わせると “喉が焼けるくらい甘い” らしい。
「だって甘いの苦手じゃなかった?」
『あーそういえばそうだっ…た…かな?』
ごくんと飲み込むと、自分のことなのにまるで他人事のように頭を傾げる宏光。
隣で聞いていた二階堂はそれほど興味も無い様子でお菓子の袋を取り上げるとパッケージをまじまじ見ながら『うげー甘そ』と顔をしかめた。
『おい!かえせ二階堂!おれのだぞ!』
いや、もともとはオレのだけどね。
『なに、ミツ事故って味覚変わったの?』
『えー聞いたことねぇよそんな話』
_ガタンッ!
何かが倒れたような物音に振り返ると、椅子から立ち上がった玉とテーブルの上に倒れたカップが目に入った。
ユラユラ揺れるカップから黒い液体がまるで生き物みたいにものすごい勢いで広がる。
やがてテーブルの端から溢れた雫が床面に落ちて、硬いフリーリングの上で小さく弾けた。
ポタリ、ポタリ、
一定のリズムを刻み広がっていく黒いシミ。
スローモーションのようなその一連の流れを無表情で見つめる玉。
その光景に、ひゅっと息が詰まる音がした。
『玉…?』
心配そうな宮田の声にはっとした表情の玉が顔を上げる。
『あ…え、ごめん俺…』
戸惑った様子の玉に、素早く反応した横尾さんがキッチンから布巾を持ってくる。
『火傷してない?服は?かからなかった?』
『だいじょうぶ…ごめん、ワッター』
『もうほんとうちの子手がかかるわー』なんて、わざとおどけて言う横尾さんの声が不自然に明るくて、ほんの少し震えているのがわかった。
いつもと違うメンバーの反応が、空気感が、容赦なくオレの不安を掻き立てる。
そういえば、今朝オレらが宏光を探しに行く前横尾さんは何を言おうとしてたんだろう
心配そうに玉を見つめる宏光をガヤさんの視線が追う。
玉は、一度も宏光の方を見ようとはしなかった。
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つーちゃん(プロフ) - 2日間で一気に読み進んだお話。想像のつかない展開にドキドキハラハラ心拍数が上がりっぱなしです。これから真意に迫って行くところですね。7人とって善き解決に向かっていきますよう楽しみにしております。 (2022年7月9日 21時) (レス) id: 51a599cbd1 (このIDを非表示/違反報告)
なぁまま(プロフ) - 面白すぎて、あっという間にここまで来ました。続きが楽しみです。 (2020年10月29日 14時) (レス) id: abc3e4578f (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 1番好きな 作品です。更新を楽しみにしています。 (2020年6月3日 17時) (レス) id: 61ecb5f320 (このIDを非表示/違反報告)
えみ - 更新楽しみにまってます! (2020年5月9日 1時) (レス) id: 168f28a7c6 (このIDを非表示/違反報告)
みつみつべー(プロフ) - 続き気になります!!読みたいです!!頑張ってください (2020年5月7日 22時) (レス) id: d4a37c70fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mini7 | 作成日時:2019年2月22日 1時