海の泡になって消えるから -第6章-

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ニカと若い刑事の堂々巡りの会話に隣で聞いていた初老の刑事が苦笑を漏らす。



『まぁまぁ。立て続けに色んなことがあって皆さんも混乱しておられるのでしょう。
どうですか、一旦帰ってゆっくり休まれるというのは』




彼らはどうしても俺達の頭がおかしくなっているという事に落ち着きたいらしい。


第三者である菊池先生の言葉一つあればきっと状況は違ったんだろうけど、ドタバタの中でいつのまにか姿を消した先生は連絡すら繋がらなくなっていた。






「…探してはもらえないんですか」


『玉森さんを刺した犯人は見つかりました』


『だから、俺を刺したのはソイツじゃないって言ってるじゃないですか！』


『凶器のナイフが見つかっているんですよ。あなたの血液がベッタリとついていた。指紋も犯人のものしか出ませんでした。そしてなによりも本人が自供してるんです。あなが覚えていてもいなくても、犯人はもう決まってるんですよ』



『そんなっ…』





刻一刻と過ぎていく時計はすでに21時を回ろうとしていた。

こうしている間にもアイツは一人で危険な目にあっているかもしれないのに。

気持ちばかり焦って頭が回らない。
だけど、何の手がかりもなく俺達だけで探すのはあまりにも無謀に思えた。



『すみません、そろそろ…』と追い出しに来たナースの姿に、刑事たちの顔があからさまにほっとした表情に変わる。


何も聞き入れようとしない、考えようとのしないその頑なな態度は、なにかを必死に隠そうとしているようにも見えた。




頭の奥の方で、あの日道に迷って泣いていた北山の顔が浮かぶ。


今も一人で泣いているのかもしれない

早く見つけてあげなくちゃ。

早く…




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