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『…わかりました。行きます』
『っ!ワッター…!!』
じっと押し黙っていた横尾さんが顔を上げる。
その表情には動揺も怯えも無く、一種の覚悟を決めたような潔さが見て取れた。
ニカの声に振り返る事もせず、一歩足を踏み出す横尾さん。
“横尾さんが、いなくなっちゃう_”
体の芯から湧き上がってくる恐怖に無意識に伸びた手はその腕を掴んでいた。
驚いた顔で振り返った横尾さんがオレの目を見てフワリと笑う。
その手がやんわりとオレの手を解こうとするから、オレはさらに握る手に力を込めた。
肝心な時にはいっつも手が震えちゃうくせに、横尾さんの手は少しも震えていない。
『…夕飯、下ごしらえしたやつ冷蔵庫に入ってるから適当に炒めて食べてね。白菜が傷んできてたから、早めに使って』
「なに、それ。何のんきなこといってんの…』
『大丈夫だから、大丈夫、』
なんの根拠もない“大丈夫”に握る手の力がするりと抜けて行く。
『宮田、あとよろしくね』
何かを言いたそうにしていた宮田が横尾さんの言葉に、ハッとして深く頷いた。
横尾さんの視線が、ふと二階へと続く階段に移る。
「ガヤさん…起こしてくる…っ」
『いい!』
「…っでも」
『いいから。眠らせてやって、まだ…』
誰も居ない階段を見つめる心配そうな瞳に胸がキュッと苦しくなった。
デビューしてからずっと、そして宏光の事件があってからは尚更、繊細で不安定になりがちなガヤさんの精神面での支えは横尾さんだった。
横尾さんが居なくなったと知ったら、ガヤさんは一体どうなっちゃうんだろう。
ガヤさんだけじゃない。
横尾さんはいつだって、オレらみんなにとっての精神安定剤だった。
『…太輔のこと、頼むね』
そう言い残すと、横尾さんは一度も振り返らずにパトカーに乗った。
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つーちゃん(プロフ) - 2日間で一気に読み進んだお話。想像のつかない展開にドキドキハラハラ心拍数が上がりっぱなしです。これから真意に迫って行くところですね。7人とって善き解決に向かっていきますよう楽しみにしております。 (2022年7月9日 21時) (レス) id: 51a599cbd1 (このIDを非表示/違反報告)
なぁまま(プロフ) - 面白すぎて、あっという間にここまで来ました。続きが楽しみです。 (2020年10月29日 14時) (レス) id: abc3e4578f (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 1番好きな 作品です。更新を楽しみにしています。 (2020年6月3日 17時) (レス) id: 61ecb5f320 (このIDを非表示/違反報告)
えみ - 更新楽しみにまってます! (2020年5月9日 1時) (レス) id: 168f28a7c6 (このIDを非表示/違反報告)
みつみつべー(プロフ) - 続き気になります!!読みたいです!!頑張ってください (2020年5月7日 22時) (レス) id: d4a37c70fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mini7 | 作成日時:2019年2月22日 1時