海の泡になって消えるから -第6章-

S ページ19

・



『ふざけんなよ！なんで横尾さんが逮捕されんだよ！』




噛み付きそうな勢いのニカを必死に抑えながら、わけのわからない状況にオレはパニックで頭が真っ白だった。

何度か会ったことのある刑事が面倒だという表情を隠そうともせず、ため息混じりに同じ説明を繰り返す。

なんだっけ、この人。
玉がなんかの動物に似てるって言ってた…




『ですから、逮捕というわけではありません。何度も申し上げた通り、真崎航が所持していたものの中に横尾さん名義のクレジットカードがあったんです。
逃亡資金として渡したということであれば、犯人蔵匿の罪になる可能性があります。ですから、署で詳しくお話を聞かせて頂きたいと申しているだけです』







クレジットカード…？

真崎航が、なんでそんなもの…





＿“もちろん、何もやましいことがなければすぐに帰れますよ”

そう付け加えた刑事の冷ややかな目が、無遠慮に横尾さんに向けられる。






嘘だ。




刑事達の顔にありありと浮かぶ蔑みの色。

さっきから言葉遣いこそ丁寧だけど、その態度は明らかに犯罪者に向けるような威圧感を含んでる。

“疑い”なんて生易しいもんじゃない。
彼らは何かはっきりとしたとした確信を持って、横尾さんを捕まえに来たんだ。




・

S→←T

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す