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『はい、これ』

「え?」




突然伸びてきたグーの手に、ほとんど反射的に手のひらを出す。




「…なに?」

『ひひ』




いたずらっ子みたいに笑う北山がパッと手を開くと、オレの手の上に小さな何かがポトリと落ちた。




『あげる。指痛てーんだろ、使ってみたら?』


「…これ…どうしたの」






自然と声が震えてしまうのを、抑えるのが難しかった。

だって、これは_






『拾った、こないだ海岸で。ほら、藤ヶ谷色でしょ?』





得意げな笑顔が真っ直ぐに俺を見る。

手のひらに乗っかった小さな花びらのようなピンク色。

それは、間違いなく以前俺が海で無くしたギターのピックだった。

前に北山がプレゼントしてくれた、ピックだった。






「思い出した、の…?」


『ん?何を?』






ザザーっと遠くの方で波の音が聞こえる。
キョトンとした表情にふっと肩の力が抜けて、なんでもない、と無理やり口角を上げた。








「さ、お客さん。今日は何から弾きますか?」


『ふふ、おれ客なの?そーだなー…』






北山が挙げるのは90年代に流行ったヒットソングから懐かしのアニメソングまで。
そこにキスマイの曲が無いことが少し寂しくもあり、でも同時にくすぐったいような嬉しさもあった。





時々考えることがある。

事務所に入っていなかったら、どんな人生を歩んでいたんだろうって。

後悔してるわけじゃない。だけど、もしも仕事としてじゃなく別の形でこいつと出会っていたら

何でもない、ただ好きな曲を一緒に歌って笑いあえるような、

こんな穏やかな日々が、あったのかもしれない。





『あ、あれは?あの…スマップのさ』

「どれ?」

『あのー、中学生くらいのときにめっちゃ流行ったやつ!』

「いや、ヒント少なくない?」

『あれだよー、あれあれ!』




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つーちゃん(プロフ) - 2日間で一気に読み進んだお話。想像のつかない展開にドキドキハラハラ心拍数が上がりっぱなしです。これから真意に迫って行くところですね。7人とって善き解決に向かっていきますよう楽しみにしております。 (2022年7月9日 21時) (レス) id: 51a599cbd1 (このIDを非表示/違反報告)
なぁまま(プロフ) - 面白すぎて、あっという間にここまで来ました。続きが楽しみです。 (2020年10月29日 14時) (レス) id: abc3e4578f (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 1番好きな 作品です。更新を楽しみにしています。 (2020年6月3日 17時) (レス) id: 61ecb5f320 (このIDを非表示/違反報告)
えみ - 更新楽しみにまってます! (2020年5月9日 1時) (レス) id: 168f28a7c6 (このIDを非表示/違反報告)
みつみつべー(プロフ) - 続き気になります!!読みたいです!!頑張ってください (2020年5月7日 22時) (レス) id: d4a37c70fd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mini7 | 作成日時:2019年2月22日 1時

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