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『あーそういうこと!』



妙に納得した様子の千賀に対して、オレは言い様のないモヤモヤが抑えきれなかった。




「…てかもうちょっと大事に扱ってあげなよ。可哀想じゃん」

『は?』

「そもそも可愛がってたペットなら尚更、なんでちゃんと土に返してあげないの?
死んだ体をいじくりまわすなんて、そんなの」

『二階堂っ…』


『あのなぁ、こいつらはもう死んでんだ。別に皮剥がれたって内臓引っ張り出されたって可哀想もクソもあるか。死んだ瞬間から、コレはただのモノなんだよ』

『ちょ、そんな言い方ひどいよ!』






言葉を失ったオレに変わって、今度は千賀が非難の声をあげる。

先生の目はいつもとはまた違った落ち着きで、その諭すような口調はまるで別人のように思えた。




『だったらお前らはこの剥製の中に機械仕込んで生きてる頃と同じように動くように出来たら、“生き返った” って思うのか?』


『そんなの思うわけないじゃん!』


『ほら、そういうことだよ。こいつらにはもう可哀想と思うような感情なんて無い。
見た目がどんないそっくりでも、これはただの皮と骨で出来たモノだ』





先生の言うことが正論だってのはなんとなくわかる。だけど…オレは…




「その…剥製にしたいって言って来た人たちはさ、その子達が帰ってきて、救われるの?」


『?』


「だって…」





依頼主達はもう二度と動かないことがわかっているその身体を撫でて、話しかけるんだろうか。

一見生きてるかのような曖昧な存在を側に置いて、生きてた頃の想い出だけを繰り返し辿って

そうして失ったことをその都度突きつけられながら生きていくんだろうか。



そんなのオレには耐えられない。

あの日、動かなくなったミツに触れた感触を思い出して、ナイフで胸を貫かれたような苦しさが蘇った。






『失った者の気持ちはその本人にしかわからんよ。お前らの言うこともわかる。
だけど、どんな形でも側に置いておきたいと思う気持ちは他人が否定出来るようなものでもない。
きっと本人が一番わかってんだよ。違うってことは。
それでも、理屈だけじゃどうにもならん感情があるわけだ』


困ったように笑う先生の足元をすり抜けて、ベンジャミンがオレの見上げてクンと小さく喉を鳴らす。

そっと撫でるとふわふわの毛に包まれた体は柔らかくてあったかかった。



M→←2



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つーちゃん(プロフ) - 2日間で一気に読み進んだお話。想像のつかない展開にドキドキハラハラ心拍数が上がりっぱなしです。これから真意に迫って行くところですね。7人とって善き解決に向かっていきますよう楽しみにしております。 (2022年7月9日 21時) (レス) id: 51a599cbd1 (このIDを非表示/違反報告)
なぁまま(プロフ) - 面白すぎて、あっという間にここまで来ました。続きが楽しみです。 (2020年10月29日 14時) (レス) id: abc3e4578f (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 1番好きな 作品です。更新を楽しみにしています。 (2020年6月3日 17時) (レス) id: 61ecb5f320 (このIDを非表示/違反報告)
えみ - 更新楽しみにまってます! (2020年5月9日 1時) (レス) id: 168f28a7c6 (このIDを非表示/違反報告)
みつみつべー(プロフ) - 続き気になります!!読みたいです!!頑張ってください (2020年5月7日 22時) (レス) id: d4a37c70fd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mini7 | 作成日時:2019年2月22日 1時

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