海の泡になって消えるから -第4章-

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《《本日未明、薬 物所持の現行犯で逮捕された元タレントの真崎航(19)が先程取り調べの最中、警察官を殴って逃亡。
その際、警官の拳銃を奪い、現在も拳銃を持ったまま都内を逃走しているとのことです。現在警察は約500人体制で捜索を進めており、近隣の住民に注意を呼び掛けています。》》




一気に話し終えたのを区切りに、画面は外の映像へと切り替わる。

どこかはわからないが、多くの警察官が周辺を駆けずり回り、あちこちで検問を行なっている様子が映し出された。

いつもなら「うわー大変なことになってるね」なんて自分とは別世界のこととして興味津々画面を覗き込んでいるところだけど、そこに出てきた名前に頭は一気に思考を停止した。





＿真崎航、が…逃亡…？





誰も何も言えないまま、画面の中の時間だけが慌ただしく進んでいくもんだから、取り残されたオレ達はただただ呆然と画面を見つめるしかなかった。


パッと画面が切り替わり、またさっきと同じ真っ白なスタジオで少し興奮した様子のキャスターが映し出された。





＿《《っえー…、たった今入った、情報です》》





手元の原稿と周囲のスタッフさんにキョロキョロと目線を移しながら、慎重に言葉を選ぶ女性キャスターにただならぬ緊張感が走る。




《《えー、容疑者は逃走する際、“資料を渡せ” などと言って署内の人間を人質に取り、用意させた＿》》




原稿を読むキャスターの目が大きく見開かれ、一時停止を押したかのように突然の無音が訪れる。

明らかに動揺した様子のキャスターは自分を落ち着けるかのようコホンと咳をすると、あくまで淡々とした様子で再度口を開いた。




《＿用意させた、昨年12月に発生のタレントの北山宏光さん遺体盗難事件に関する資料数冊を持って逃亡した、とこことです。警察では引き続き、この2つの事件の関連性を調べていくと共に…》》




何も処理が追いついていない頭に容赦なく次から次へと追い討ちをかけるように情報が飛び込んでくる。

誰も、身動きひとつ取れなかった。

窓の外はまだ強い風で雨戸がガタガタと揺れて、それがさらに不安を煽ってくるようで腹が立った。

何よりも、いまだに事件のことを何もわかってない自分に腹が立った。



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